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<魚介類の食中毒>鮮度や衛生面で気をつけるポイントは? ノロウイルス・アニサキス・ヒスタミン

新鮮な魚介類はとても美味しいですが、一方で魚介類の中には有毒で食べられないもの、寄生虫や菌などによる食中毒に注意が必要なものがあります。

食虫毒を引き起こすと激しい腹痛に襲われたり嘔吐や痙攣をしたりするなど、様々な症状に見舞われる可能性があります。

こういった魚介類による食中毒のリスクを避けるにはどうしたらよいのでしょうか。

魚介類で発生する恐れのある食中毒とは?

魚介類による食中毒は、魚介類の種類や捕れる時期、海域によって左右されることが分かっています。

食中毒の原因は大きく分けると、ウイルス、細菌、寄生虫、化学物質があり、加熱不足や鮮度の悪い魚介類を食べることにより発症します。症状は原因物質により様々ですが、中には救急搬送されるケースもあるので注意しましょう。

ウイルスによる食中毒

ノロウイルスは二枚貝に蓄積しやすい(提供:PhotoAC)

魚介類の生食による食中毒は、カキなどの二枚貝によるノロウイルス感染がよく知られています。

生食用ではない二枚貝を十分加熱せずに食べると、発症の恐れが高くなります。

ノロウイルスは二枚貝に蓄積されやすく、低温や乾燥に強いため、生食用でも冬季は発生の危険が高まり、注意が必要です。

細菌による食中毒

魚介類の食中毒のうち、細菌が原因のものはいくつかあります。

最も多く発生するのが、腸炎ビブリオによるものです。保存状況が悪い場合や加熱不足で食中毒を引き起こします。

腸炎ビブリオ菌は海水温が15℃以上になると活発に増殖するため、夏場はこの細菌による食中毒が発生しやすくなります。

また、スッポンやウナギなどの淡水養殖魚ではサルモネラ菌による食中毒(加熱不足)が起きる場合もあります。

寄生虫による食中毒

令和6年度の厚生労働省の統計によると、食中毒による事件数の約3割が寄生虫です(1037件中355件)。また、寄生虫が原因の食中毒事件のうちアニサキスは93%を占めます(355件中330件)。

アニサキスは、特に「サバ」と「イカ」に多く寄生しており、「サンマ」「アジ」「カツオ」「サケ」などにも見られます。内臓や腹腔、筋肉に寄生するため、生食には十分注意が必要です。

アニサキスが寄生した魚肉(提供:PhotoAC)

アニサキスは半透明な白色をした糸状の線虫で、マイナス20℃で24時間以上冷凍するか、70℃以上で十分加熱しないと死滅しません。生きたアニサキスが寄生した魚介類を食べると、数時間から数日後に激しい腹痛や嘔吐が起こり、状況によっては救急搬送が必要になります。

なお、食中毒を起こす寄生虫にはクドアという魚の筋肉に寄生する粘液胞子虫もいます。クドアが寄生したヒラメを食べて食中毒を発症した事例が報告されており、令和6年度では寄生虫が原因の食中毒事件の約6%でした(355件中23件)。

化学物質による食中毒

魚介類の食中毒のうち化学物質によるものは、ヒスタミン中毒です。ヒスタミンはアミノ酸の一種であるヒスチジンがヒスタミン産生菌の酵素により変換されることで生じます。

魚が死んでから時間経過とともに増加するヒスタミンはアレルギーを引き起こす物質で、多量に摂取すると「じんましん」「頭痛」「発熱」などのアレルギー症状が現れるのです。

ヒスチジンはマグロ、カツオ、サバ、イワシ、ブリなど青魚に多く含まれ、死んだ瞬間からヒスタミンの生成・蓄積が起こることが分かっています。特に、メジカの新子(マルソウダガツオの幼魚)は鮮度の低下が早いことが知られています。

ヒスタミン産生菌はエラや消化管に多く存在するため、購入後にできるだけ早く取り除くことが大切です。

魚介類を買うor食べる際の注意点

食中毒予防の鉄則(提供:PhotoAC)

魚介類は様々な細菌やウイルス、寄生虫が存在する豊かな海に生息します。そのため、季節や海域によってはこれらの食中毒を誘発する生物の存在量が変化し、多いときには食中毒が発生しやすくなります。

食中毒を起こさないようにするには、まず購入する魚介類が新鮮であることが必須です。流通における温度管理(低温管理)ができていれば、魚は新鮮な状態を保ちやすくなります。

血抜きされ低温下で保管されるメジカ(ソウダガツオの新子)(提供:額田善之)

ただし、鮮度が劣化しやすい魚などは、捕ってすぐに血抜きや内臓を除去しないといけないものもあるので注意が必要です。

食べる前に異臭がするものや魚体の色味がおかしいものは食用に向きません。また、魚の目が窪んで濁っていたり、身がブヨブヨしていたりと明らかな鮮度の低下が見られる場合は、もったいないですが食べずに廃棄しましょう。

無理して食べて食中毒になると、体調や仕事にも大きな影響を及ぼします。

釣った魚も注意!

釣った魚を生食する場合も注意が必要です。

低温保管したうえでエラや消化管をできるだけ早く除去し、さばく際にアニサキスがいないかどうかを確認しましょう。心配な時は加熱調理することをおすすめします。

ヒスタミンが高濃度に蓄積された魚を食べると、舌がピリッとする場合があります。このような時は迷わず廃棄してください。

なお、妊婦については、胎児に影響する水銀を多く蓄積しているクジラやイルカ、キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチマグロなどについては食べ過ぎないように注意が必要です。ただ、マグロの中でも、キハダ、ビンナガ、メジマグロ(クロマグロの幼魚)やツナ缶は普通に食べる量であれば問題はないそうです。

妊婦における魚介類の摂取については、厚生労働省がパンフレットにまとめるなどして発信しています。

生魚の調理に使ったまな板や包丁を綺麗に洗わない、手指をしっかり洗わないなど衛生面に問題があると、細菌やウイルス、寄生虫が他の食材に付着し、間接的な食中毒を引き起こすため、注意しましょう。

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額田善之

額田善之

人生を楽しもう!

愛媛大学理学部生物学科卒の生粋の生き物大好きライターです。特に魚が好きで、子どもと水族館巡りや釣りを楽しんでいます。オートバイで旅をして産地の珍しい魚を食べるのも趣味です。旅行や納豆の記事をよく書きますが、今回から水生生物についても執筆していきますので、よろしくお願いいたします。

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