海の95パーセントを占める深海。
実は宇宙よりも行くことが難しく、謎が多いとされています。そこにロマンを感じる方も多いのではないでしょうか。かくいう私もそのひとりです。
深海は、高水圧・低水温・暗黒の世界。そして、餌も少ないという過酷な環境です。
そんな深海では、生き抜くために独特な進化をした深海生物が数多く存在します。
そのなかでも頭を透明にするという、非常にユニークな進化をとげた魚が<デメニギス>です。
デメニギスはどんな魚?
デメニギスは、ニギス目デメニギス科デメニギス科属に含まれる唯一の魚。生息域は北太平洋の水深600〜800メートルほどの中層です。
体長は約10〜15センチメートルほどで、両手に収まる大きさ。意外と小さい魚です。
ちなみに口のすぐ上にある、目のように見えるものは鼻孔です。
デメニギスは意外と小さい!(提供:オーデン)デメニギスを漢字で書くと<出目似鱚>。透明な頭の中で、目が筒状に飛び出して見えるのが金魚のデメキンに似ていることと、ニギスはスズキ科の鱚(キス)に似ていることから、このように名づけられたと言われています。漢字にすると名前が覚えやすいですね。
また、デメニギスは面白いことに、2つの別名を持つ魚でもあります。
1つめはBarreleye(バレルアイ)。デメニギスは1939年に網にかかったことから存在が発見されました。その際、頭部が破損しており、特徴的な筒状の目が樽に似ていることから呼ばれるようになりました。
2つめはSpook Fish(スプーク・フィッシュ)。デメニギスの透明な頭と、ゆったりと海中を漂う姿から幽霊を連想したのでしょう。この別名はデメニギスだけでなく、同じく深海魚のギンザメもこのように呼ばれることがあります。
アメリカのモントレー湾水族館研究所(MBARI)は2009年、カリフォルニア州中央沿岸部沖の深海で撮影したデメニギスの映像を公開。今もYouTube上で見ることができます。
デメニギスの頭が透明な理由は<深海で生きるための生存戦略>
デメニギスの頭が透明なのは、生存戦略の1つとされています。
透明な膜におおわれた頭の中は、ゼリー状のもので満たされています。その中に筒状で緑色に光る1対の目が格納されているのですが、ここがポイントです。
デメニギス(提供:オーデン)デメニギスの餌は、おもに毒を持つクダクラゲやクラゲが捕獲した小魚、小型漂流生物とされています。
クダクラゲを含むほとんどのクラゲは、足に刺胞(しほう)という毒を含むトゲを持っています。そこで、デメニギスは頭部を透明な膜で包み目を保護したのではないかと考えられています。
その結果、クラゲの毒も気にせず捕食できるようになったとされ、餌を食べる際には、体を垂直にして、上を向いていた目を前方に回転させることで、前方方向も見ることができるようです。
また、頭を透明にするメリットはもう1つあるとされています。それは獲物がつくる影をとらえやすくする、という点です。
クラゲなどの餌が頭上を通ると、深海に届くわずかな太陽光をさえぎることで影が生まれます。この絶好のチャンスをつかむのに役立っているのではないかと考えられているのです。
不思議な見た目には生存戦略がつまっている
透明な頭が特徴的な深海魚<デメニギス>。
頭が透明なのは、過酷な深海で餌を見つけ、クラゲなどから目を守るため。そして、視界を確保し、数少ないタイミングを逃さず捕食するという、驚きの生存戦略から生まれたユニークな姿なのです。
このように、深海魚の不思議な見た目には生存戦略が隠されています。「なぜこの魚はこんな見た目なのか?」というところから、考えてみたり想像してみたりすると面白い発見があるかもしれませんよ。
(サカナトライター:オーデン)