小型テナガエビ類は、タイやインドシナ半島の内陸部で日常的に消費されている水産物です。
これらのエビは食用としてはもちろんのこと、内水面漁業の発展にも欠かせない存在。一方、水産物の持続可能な利用には、産卵親や未成熟個体の保護などが必要とされていますが、テナガエビ類類の生活史に関する知見は不足していました。
そうした中で、国立研究開発法人 国際農林水産業研究センターはタイ・ウボンラチャタニ大学との共同研究で、タイ東北部のテナガエビ類を対象に調査し、その生活史を明らかにしました。
この研究成果は「Fisheries Research」に掲載されています(論文タイトル:Life history aspects of the small freshwater shrimp, Macrobrachium lanchesteri species complex (Palaemonidae))。
重要な水産資源「テナガエビ」
テナガエビ類は日本を含む各地で食用とされている水産資源で、特に東南アジアで養殖が盛んにおこなわれています。
テナガエビ類(提供:PhotoAC)小型テナガエビ類 Macrobrachium lanchesteri 種群は、タイやインドシナ半島の内陸部では日常的に消費されており、オニテナガエビに次いで重要な甲殻類です。
本種群は地域の食文化を支える役割を持つほか、内水面漁業の持続的な発展にも欠かせません。
生活史は謎に包まれている
水産資源を持続的に利用するためには、過剰な漁獲を防ぎ、産卵親や未成熟個体を保護するといった資源管理策が有効です。そのためには、科学的根拠となる諸情報を、漁業関係者や行政機関といった資源管理者へ提供する必要があります。
この情報の基礎となるのが、対象となる生物の成長、成熟、産卵、漁獲対象となる時期などの資源生物学的情報。一方、小型テナガエビ類 Macrobrachium lanchesteri 種群の生活史については知見が不足していました。
特にタイ東北部に分布する個体群については、生活史全般の情報が欠けていたといいます。
透明な体を活用した研究
タイ東北部において、小型テナガエビ類は重要な水産物です。
ここに分布する小型テナガエビ類は、生体や鮮度の良い個体だと体が透明であり、固定後も解剖せずに卵巣の状態を確認できることが知られています。また、抱卵しているメス個体の識別も簡単なようです。
テナガエビ類(提供:PhotoAC)研究チームはこれらの特徴を生かし、年間を通じてメス個体の卵巣発達段階と抱卵の有無を観察すれば、サイズ別の成熟状況の季節変化を把握し、産卵盛期の有無を明らかにできると考えました。
加えて、季節ごとに漁獲物のサイズ組成の変化を追跡することで、成長パターンや、生まれた個体が漁獲対象となる時期を推定できる可能性があるとされています。
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