見つけやすく採集もしやすい、身近な磯の魚・ナベカ。
素朴な見た目ながら、観察してみるとユニークな生態や愛らしいしぐさに気づかされます。
かつてその魅力に引き込まれ、実際に飼育したことがある筆者が考える、ナベカの生態と魅力を紹介します。
ナベカはタイドプールで見つかる身近な魚
ナベカ Omobranchus elegans は、硬骨魚綱スズキ目イソギンポ科ナベカ属に分類される魚です。
学名に「elegans」とある通り、頭部には縞模様があり、尻尾にかけては華やかな黄色の体色をしています。
ナベカ(提供:PhotoAC)磯へ遊びに行くと出会うことが多い魚で、主にタイドプールや内湾のカキ殻の中などで見られます。
なお、“ナベカ”という不思議な名前の由来はわかっていないようです。漢字表記の「那辺加」も由来や意味は不明で、当て字とも言われています。
ナベカの生態
日本では北海道南部以南に分布し、朝鮮半島南部や山東半島にも見られます。世界的には、西太平洋からインド洋にかけての大陸棚海域に広く分布しています。
食性は雑食性で、底生動物やプランクトン、藻類など、口に入るサイズであればさまざまなものを食べます。
流れ藻で成長し底生生活へ
海域の表層部で浮遊生活を送り、流れ藻があればそこで生活しながら成長。そして、夏~秋に全長約13mmの大きさ(飼育実験によるとふ化後約1か月)になって再び海岸近くへ戻り、底生生活を送ります。水が干上がるところでも匍匐(編集部注:ほふく)して移動します(難波, 1926)。
貝殻や朽木の孔、岩の孔などを産卵場として付着卵を産み付け、オス・メス両方、あるいはオスが卵を保護します。
一般に産卵期間が長く(春〜初夏)、生活史は1年以内またはそれに近く、世代時間は短いです。オスが巣を構え、メスを誘引して産卵させます。
その際、体色が変化します。雄は体の地色が黒で白線が入り、雌は黄色で褐色の線が浮き出ます(Sunobe, 1998)。
また、威嚇や摂餌など興奮すると頭部が黒褐色へと変化します。
可愛いポイントは“目”と“模様”
実際に飼育していた際、目の周りが白く、くりくりした目が可愛く感じました。そんな目で周囲を見たり、砂や岩の上などに腹鰭を使ってちょこんと立たずんでいる姿もたまりません。
また、ナベカならではの目玉付近にある縞模様と黄色のフォルムにも魅力を感じました。
比較的見つけやすい魚ですので、磯遊びやタイドプール観察の際には、ぜひ探してみてください。
(サカナトライター:Sunchan)
参考文献
難波庄作, 1926. ナベカ(Ptroseirtes elegans)の陸上匍匐について. 動物学雑誌 38巻 455号 pp.321-322.
T. Sunobe, 1998. Notes on the mating system of Omobranchus elegans and O. fasciolatoceps (Blenniidae) at Maizuru, Japan. Ichthyological Research 45: 319-321.
Notes on the mating system of omobranchus elegans and O.fasciolatoceps(Blenniidae)at Maizuru, Japan /Tollloki Sunobe /1998
イソギンポの生活史 /道津喜衛・森内新二/ 1980