東京科学大学発ベンチャーのaiwell株式会社は、沖縄美ら海水族館を運営する一般財団法人沖縄美ら島財団、住友商事北海道株式会社と共同で、ジンベエザメやナンヨウマンタなど軟骨魚類の健康状態を科学的に可視化する研究プロジェクトを本格始動しました。
血液中のタンパク質変化を高精度にとらえる独自プラットフォームを生かし、水族館で暮らす大型海洋生物の健康管理と動物福祉の高度化を目指します。
ジンベエザメの“体調”をタンパク質で読む
aiwellは今年2月、沖縄美ら島財団、住友商事北海道と共同研究契約を締結。4月からは軟骨魚類を対象とした、本格的なプロテオミクス解析に着手しました。
対象となるのは、世界最大級の魚として知られるジンベエザメやナンヨウマンタなど、独特の生理学的特性を持つ軟骨魚類です。
ナンヨウマンタ(提供:PhotoAC)沖縄美ら海水族館では、これまでも独自の血液検査に基づき健康状態を評価してきましたが、今回の共同研究では、血液中のタンパク質を網羅的に解析することで、より詳細で客観的な健康評価指標の確立を目指すといいます。
同一個体の血液と飼育記録を長年にわたり蓄積してきたデータ基盤を生かし、「見えない体調変化」を早期にとらえる新たな仕組みづくりに挑みます。
最新プロテオミクスで“健康指標”を探索
研究チームは、タンパク質網羅解析を通して、健康状態の変化と相関するタンパク質を抽出。 健康変動と連動する候補タンパク質の特定と共に、将来的な診断指標としての社会実装可能性の検討を柱に据えています。
予備的な検討では、免疫や炎症、栄養状態、細胞の恒常性維持に関わるタンパク質の変動が確認されており、これらを軟骨魚類の「健康指標」として位置づけることが狙いです。
今後は、水族館や研究機関の健康管理体制をアップデートするとともに、希少種の長期飼育や保全技術の高度化にもつなげたい考えです。
3者連携で社会実装まで視野
共同研究においては、沖縄美ら島財団が検体採取と飼育データの統合解析、aiwellがタンパク質網羅解析とバイオマーカー探索を担い、住友商事北海道が市場性調査や社会実装戦略の立案を担当。
研究成果を学術レベルにとどめず、検査サービスや新たな健康管理モデルとして展開することを見据えた体制だといいます。
海の生きものの“未病”をとらえる技術へ
今回の共同研究は、水族館の動物医療・飼育管理を高度化するだけでなく、海洋生物の保全という社会課題への貢献も掲げています。
血液中のわずかなタンパク質変化から「未病」の段階を把握できれば、ジンベエザメをはじめとする大型生物の健康リスクを早期に察知し、負担の少ない治療や環境改善につなげることが可能になります。
aiwellは「見えない変化を見える化する」技術を通じて、陸上動物から海洋生物までをカバーする新たなバイオマーカー活用モデルの構築を目指すとしています。その成果が、将来的に国内外の水族館や保全施設に広がり、未来の海の生態系を守る一助となるかもしれません。
(サカナト編集部)