ゲンゴロウ科は日本各地で個体数を急速に減らしている水生昆虫です。
中でも、マルコガタノゲンゴロウは環境省のレッドリストにおいて、絶滅危惧IA類に選定されています。また、種の保存法では国内希少野生毒植物種に指定される稀少な昆虫です。
ゲンゴロウ科の昆虫(提供:PhotoAC)しかし、本種は保全の重要性が高いもかかわらず、マルコガタノゲンゴロウの幼虫を対象にした、食性に関する網羅的な研究はなかったといいます。
そうした中、石川県ふれあい昆虫館の渡部晃平学芸員らの研究グループは、野外観察と室内実験により、マルコガタノゲンゴロウの幼虫が様々な餌動物を食べることを明らかにしました。
この研究成果は「Limnology」に掲載されています(論文タイトル:Feeding habits of the endangered diving beetle Cybister lewisianus larvae)。
多様な動物を餌として利用
石川県ふれあい昆虫館の渡部晃平学芸員らの研究グループは、石川県と熊本県での野外観察と室内実験をおこないました。
その結果、野外においては、マルコガタノゲンゴロウの幼虫は主に、ヤゴやエビなどの水生無脊椎動物を捕食していることが判明。また、魚(ミナミメダカ)やオタマジャクシ(ツチガエル)などの脊椎動物の捕食も観察され、多様な動物を餌として利用していることがわかりました。
ミナミメダカ(提供:PhotoAC)さらに、若齢幼虫は主にヤゴやカゲロウ類の幼虫を捕食する一方、老齢幼虫は主にエビを捕食するなど、成長に伴う餌構造の変化もわかっています。
マルコガタゲンゴロウの幼虫はジェネラリスト
ヤゴ、魚、エビ、オタマジャクシの4種の餌を与える室内実験では、ヤゴ、魚、エビ、オタマジャクシの順で幼虫の生育日数が短く、大きな幼虫に育つことが確認されています。
また成虫までの生存率は、ヤゴ、エビ、オタマジャクシに比べ魚で低くなること、餌の選好性は若齢幼虫で低く、老齢幼虫でヤゴとエビを好む傾向があることも明らかになりました。
これらのことから、マルコガタノゲンゴロウの幼虫が様々な動物を餌として利用し成長できるジェネラリストであることが示唆されたのです。本種の保全には、様々な水生生物が暮らせる環境が重要とされています。
保全対策に重要な知見を提供
今回の研究によって、マルコガタノゲンゴロウの幼虫がエビ、ヤゴ、オタマジャクシ、魚など、様々な水生生物を餌として利用し、成長できることが明らかになりました。
この知見はマルコガタノゲンゴロウの保全対策に活用されることが期待されています。
(サカナト編集部)