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オスとメスで形態が異なる? 深場の希少魚<スミツキハナダイ>が性転換することが判明

水深100~300メートルに生息するスミツキハナダイ

本種は古くからオスとメスで体色が異なることが報告されていました。しかし、採集例が少ないことから知見が不足しており、体色の違いが雌雄差なのか、あるいは種間の差なのか、科学的な検証が不十分でした。

また、ハタ科やハナダイ科の一部では性転換をすることが知られていますが、研究対象は浅海性魚類や水産上有用な種に偏っています。

そうした中で、近畿大学大学院農学研究科環境管理学専攻博士前期課程2年の野村玲偉(研究当時、現:山口県水産研究センター)らの研究グループは、スミツキハナダイ属を対象に性転換と雌雄差について検証を実施し、外部形態の雌雄差などを明らかにしました。

この研究成果は「Ichthyological Research」に掲載されています(論文タイトル:Sexual dimorphism and protogeny in two species of Selenanthias (Serranidae: Anthiadinae) collected from Japanese waters)。

希少な魚「スミツキハナダイ」

スミツキハナダイ Selenanthias analis は水深100~300メートルの岩礁周辺の砂底に生息するハナダイ科スミツキハナダイ属の魚類。古くから、本種は体色の異なるオスとメスの存在が知られています。

しかし、スミツキハナダイは採集例が少ないことから研究が進んでおらず、体色の違いが種間の差なのか、雌雄差なのか科学的な検証が不十分でした。

また、同じスミツキハナダイ属のキイハナダイ Selenanthias sp. についてはさらに採集例が少なく、なんと国内での報告はわずか2例にとどまっています。

魚の性転換

魚類の中には成長に伴い性別が変わる「性転換」を行う種がいます。

特にハナダイ科、ハタ科、ベラ科の一部では、メスとして成熟した後、オスに変化し繁殖する「雌性先熟型」の性転換が知られています。この戦略では、大きくなってオスに変化し周囲のメスと配偶できるメリットがあるようです。

魚の性転換についての研究対象は水産上有用な種や浅海性の魚類に偏っており、深場の魚や流通しないような魚では知見が不足。スミツキハナダイ属2種についても、性転換を行うかどうか十分な検証はされてませんでした。

性転換をする魚「スミレナガハナダイ」(雄)(提供:PhotoAC)

そうした中で、近畿大学大学院農学研究科環境管理学専攻博士前期課程2年の野村玲偉氏(研究当時、現:山口県水産研究センター)、同博士前期課程2年の上地健琉氏(研究当時、現:マリノリサーチ株式会社)、同准教授の宮崎佑介氏、近畿大学農学部水産学科教授の小林靖尚氏、一般財団法人沖縄美ら島財団主任研究員の宮本圭氏、神奈川県立生命の星・地球博物館学芸員の和田英敏氏で構成された研究グループは、繁殖様式が謎に包まれていたスミツキハナダイ属を対象に観察や遺伝的な解析を行いました。

深場狙いの小物釣りでサンプリング

研究グループは、この研究で使用するスミツキハナダイ属を採集するために、相模湾、紀伊半島、沖縄県周辺海域で、船釣りによるサンプリングを実施しました。

相模湾(提供:PhotoAC)

日本産スミツキハナダイ属魚類は2種が知られています。

このうちスミツキハナダイに関しては、近年、若手魚類学者の間で流行している深場小物釣りにおいて、まとまった数の標本を得られることがかわっています。

一方、キイハナダイについては、いまだ入手困難な魚のようです。

観察や遺伝的な解析でアプローチ

採集されたスミツキハナダイ属2種については、研究グループにより外部形態と生殖腺組織の観察、ミトコンドリアDNAのCOI領域に基づく系統解析が行われました。

その結果、スミツキハナダイ属のオスとメスで明瞭な外部形態の違いがあることが明らかになったほか、スミツキハナダイが性転換を行うことが示されています。

外部形態の性的二型

外部形態の違いでは、スミツキハナダイのオスが臀びれに黒斑、頭部に黄色班、体表に真珠色の鱗を持つのに対し、メスは前鰓蓋骨と主鰓蓋骨のが白く縁どられることが特徴として挙げられています。

さらに、体長、腹びれ・臀びれ・尾びれの糸状に伸びた鰭条もオスの方が長いことも示されました。さらに、生殖腺細胞を詳しく観察した結果、オス型では精巣が観察され、メス型は卵巣が観察されています。

これらの形質は外部形態の性的二型と考えられています。また、キイハナダイについても本種と共通する雌雄差があることが判明しました。

中間的な形態を持つ個体

スミツキハナダイについては、オス型とメス型の中間的な形態を持つ個体が複数の標本が得られたといい、中間的な形質を持つ個体のうち4個体については、卵巣組織と精巣組織の両方が存在する両性生殖腺が観察されています。

遺伝子解析ではオス型とメス型でが同一種に内包されることが判明し、外部形態の差が種間の差ではなく雌雄差であることが明らかにされました。

なお、中間的な形態を持つ個体はオスとメスの中間的な大きさであり、生殖腺の様子なども含め、スミツキハナダイが雌性先熟型の性転換をする種であることが示唆されたのです。

魚類分類学の発展に貢献

今回の研究によって、スミツキハナダイ属における外部形態の性的二型が明らかになったほか、スミツキハナダイがメスからオスへ性転換することが示されました。

この成果は、魚類分類学や魚類の配偶システムの発展に貢献することが期待されています。

(サカナト編集部)

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サカナト編集部

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