海鳥はほとんどの種が繁殖期になると集団繁殖地を形成しますが、コロニーの形成には餌をめぐる競争が強まるなどのデメリットも知られています。それにもかかわらず、多くの動物でコロニーを形成するのはなぜでしょうか。
有力な説として知られるのが、他個体から良質な餌場の情報(社会的情報)を得られるということです。しかし、実際にどの仲間から社会的情報を得ているか、いつその情報を使うのか検証した研究はありませんでした。
そうした中で、総合研究大学院大学の研究グループは、アデリーペンギンを対象にバイオロギングによる調査を実施。採餌に失敗したペンギンは他の個体を追跡し新たな餌場に到達することが明らかになりました。
この研究の成果は「Proceedings of the Royal Society B」に掲載されています(論文タイトル:Unsuccessful foragers acquire social information through group departure and travel in penguins)。
動物がコロニーを形成するメリット
多くの動物は集団で生活することが知られています。
海鳥のほとんどの種では繁殖期になるとコロニーを形成しますが、餌をめぐる競争が強まる、病気が広がりやすくなるといったデメリットも存在します。
それにもかかわらず、多くの動物でコロニーを形成するのは、一体なぜなのでしょうか。
アデリーペンギン(提供:PhotoAC)有力な説の1つとして知られるのが、「仲間から餌場についての情報を得られる」ことです。良質な餌場かどうかというのは、動物が生存や繁殖の成功率に左右される重要な要素と言われています。
つまり、仲間と集い営巣することで、その行動を観察し餌場の位置や質についての情報が得られる可能性があるのです。こうした、他の個体から得られる情報は「社会的情報」と呼ばれています。
しかし、実際の野生動物がどの仲間から社会的情報を得ているのか、いつ社会的情報を使うのかを検証した例はありませんでした。
前回の餌場を再び利用する
研究では、アデリーペンギンがどのような情報をもとに餌場を選択しているのかを明らかにすべく、昭和基地付近・南極リュツォ・ホルム湾の鳥の巣湾にあるアデリーペンギンのコロニーを対象にバイオロギングを用いた調査が行われました。
アデリーペンギン(提供:PhotoAC)このコロニーには135つがいが繁殖しており、最大で116個体を同時に調査。この数はコロニーの個体の約4割に相当しています。
研究グループは、これらの個体得られた653トリップ(往復移動)の移動データを解析することで、多くのトリップで自分が前回のトリップで利用した餌場に再び戻る行動を確認しました。
これは自身の経験に基づき餌場情報のを利用していると考えられています。
仲間の情報を利用して餌場へ
一方、コロニーを数個体同時で出発し、一緒に餌場へ向かうといった行動も確認されています。
これらのトリップでは、群れの一部が仲間が前回のトリップで利用した餌場を訪れていることが明らかになっています。
これは、アデリーペンギンが仲間と群れを形成して出発・移動することで、過去に仲間がどこへ行ったのかという社会情報を得ていること、それを基に新たな餌場に辿り着いていることを示すものです。
採餌に失敗すると社会情報を利用する?
さらに、トリップにおける採餌の成功度と餌場の情報源の関係性を調べた結果では、前回のトリップで採餌に失敗した場合、社会情報を利用し他の餌場へ行く傾向が見出されています。
このように、アデリーペンギンは餌時に失敗すると、他の個体から社会情報を得て、餌場を探していることが明らかになったのです。
集団生活のメリットの解明へ
今回の研究によって、アデリーペンギンが群れの仲間の社会情報を利用して餌場に辿り着いていること、採餌に失敗するとその傾向が高いことが明らかになりました。
これは群れでの移動が、餌場の情報を獲得する場になっていることを示唆しているといいます。
また、この成果は集団生活が動物にどのような恩恵をもたらすのか、動物の社会性がなぜ進化したのかを解明する上で重要な知見になるとしています。
(サカナト編集部)