池や湖などの淡水に生息する小さな生き物、ミジンコ。
子どものころ理科の授業で観察して以来、その姿を見ていない方も多いのではないでしょうか。
「ミジンコ」とひとまとめに呼ばれる生き物にも、さまざまな種類がおり、それぞれ違った環境に適応しています。
そのほんの一部ですが、ミジンコの世界をのぞいてみませんか。
湖ごとに違うミジンコ
動物プランクトンであるミジンコ。サイズはおおむね~1mm前後と、とても小さな生き物です。
分類では、節足動物門 – 甲殻亜門 – 鰓脚綱(さいきゃくこう)に属します。このうち、ノロ上目と枝角上目に含まれるのが、いわゆる「ミジンコ」と呼ばれる仲間です。
学校で観察したミジンコは、おそらく枝角上目の異脚目に含まれる種でしょう。
湖によって目立つミジンコの種類は違う
わたしがラトビアの研究所で湖の生態系を調べていたとき、湖によって目立つミジンコの種類が違うことに気づきました。
主なミジンコ(提供:Polo the Rat)ここでは、特によく見かけた3つのグループを紹介します。
ミジンコ属 (Daphnia)
盛り上がった頭と大きな複眼が特徴。比較的大型で、湖の沖合に多く、植物プランクトンを効率的に濾過する能力があります。
ゾウミジンコ属 (Bosimina)
吻から伸びる第1触角が前下方へ向かい、ゾウの鼻のようにみえます。小型で、魚に見つかりにくく、沖合にもよく出現します。
マルミジンコ属 (Chydorus)
丸い体型で、黄色みを帯びていることが多い小型種。岸辺や水草帯、底質など隠れ場所の多い環境に多く見られます。
ミジンコの顔ぶれを決める最大の要因は魚
湖でどのミジンコが優勢になるかを決める最大の要因は、「魚による捕食圧」です。
大型で目立つミジンコ属は食べられやすいため、プランクトン食の魚が多い湖では数を減らし、代わりに小型のゾウミジンコ属などが優勢になります。
反対に、魚が少ない湖ではミジンコ属が増え、ゾウミジンコ属など小型種を抑えることがあります。
水草・水質・季節も関係する
ミジンコの種類を決めるのは魚だけではありません。湖の環境も大きく影響します。
たとえば、水草が多い浅い湖では隠れ場所が豊富なため、マルミジンコ属が増えやすくなります。栄養塩が多い湖では植物プランクトンが増え、それに伴ってミジンコの群集構成も変化します。
水深や水温、pH、透明度といった条件によっても、沖合性のミジンコ属やゾウミジンコ属の分布が変わってくるのです。また、季節によって魚の稚魚や植物プランクトンの量が変動するため、優占種も入れ替わっていきます。
このように、ミジンコの世界は周囲の環境に合わせて大きく変化しています。
お気に入りのミジンコ
湖ごとに卓越するミジンコの種類は、偶然ではありません。
魚による捕食、水草の分布、水質、湖の構造、季節変化といった要因が重なり合い、その湖ならではの「ミジンコの顔ぶれ」が形作られるというわけです。
最後に、私の好きなミジンコ・ノロ属(Leptdora)を紹介します。
捕食系ミジンコ・ノロ(提供:Polo the Rat)上の3属は植物プランクトンを濾過して食べますが、ノロはミジンコには珍しい「捕食性」で、他のミジンコを食べています。
サイズは1.8mmと超大型で、姿もまさに捕食者そのものという感じなのです。
分析中にノロを見つけると、なんだかラッキーな気分になったものでした。