皆さんは泥の上でピョンピョンと飛び跳ねるハゼを見たことがありますか? 磯に遊びに行くと、潮だまりに向かって移動している姿を見かけるかもしれません。
しかし、ハゼは魚なのに「水から出ても平気なの?」と疑問が残ります。そこで今回は「ハゼが陸で生きられる理由」について詳しく紹介します。
ハゼの仲間は水から出ても呼吸ができる
トビハゼやムツゴロウなどハゼの仲間には1日のほとんどを陸上で過ごす種がいます。ハゼの仲間が陸上で生活できる理由は、皮膚呼吸によって酸素を取り込めるからです。
ほとんどの魚は、エラ呼吸によって水中にある酸素を取り込みます。そのため、水のない環境では活動できません。
しかし、皮膚が薄いハゼの仲間は、血管が体表の付近にあるため、水に溶けた酸素を血液に直接取り込めます。体表が水に濡れていれば、水から出ても皮膚呼吸で生活できるわけです。
さらに、トビハゼの仲間は、エラぶたに水を溜めることで陸上でもエラ呼吸ができます(トビハゼの話-新江ノ島水族館)。まるでハムスターのように、プクッと口を膨らませている姿が印象的ですよ。
ハゼが干潟に暮らす理由
ハゼの仲間が皮膚呼吸をするためには、体が水に濡れている必要があります。そのため、陸上に長時間いられるわけではなく、水たまりや潮だまりが豊富な「干潟(ひがた)」でよく見かけます。
では、トビハゼやムツゴロウがわざわざ水の外(干潟)に出るのはなぜでしょうか? その理由は、干潟にはエサとなる生き物がたくさん見つかるからです。
干潟や泥の中には、潮の満ち引きで取り残された小さな生き物や有機物がいます。とはいえ、海の魚たちは、干潟の潮だまりに泳いでたどり着けません。
しかし、トビハゼの仲間は、その名のとおり泥の上を飛び跳ねて移動できます。ほかの捕食者がたどり着けないエサ場を独占できるわけです。
また、泥の上を移動できるため、トビハゼ自身も外敵となる捕食者から逃れられます。体が小さく、お世辞にも強いとは言えないハゼたちが、環境に適応するための生存戦略なのかもしれませんね。
ハゼは道に迷わないのか?
潮の動きによって魚の釣れやすさが変わるように、魚たちの行動は潮の満ち引きによって変化します。ハゼの行動も同様に、潮が満ちると岩場や藻場に退避し、潮が引くとエサ場となる潮だまりに向けて移動します。
ここで、ハゼは「どのように潮だまりの位置を把握しているのか?」と、また疑問に思いました。潮だまりといっても、どこにでもあるわけではありません。「向かった先には何もなかった」「やっと見つけた水場は大海原でした」なんてこともあるはずです。
しかし、広島大学「こころの生物学」研究室の研究(吉田将之[2017]、魚だって考える―キンギョの好奇心、ハゼの空間認知、築地書館)によると、どうやらハゼたちは「潮だまりの場所」を理解する空間認知力があるそうです。
研究結果からは、生息域の地形はもちろん「どこに向かえばエサが見つかるのか」を把握していると推測できます。そう言われてみると、釣りをするときに魚たちが、決まった時間・タイミングに「特定の場所」へ集まってくるのも納得です。
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