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幻の怪魚<アカメ>の全ゲノム解析で進化と生存の歴史を探る研究が発表 少ない個体数で長期間存続

アカメは日本固有種で、主に高知県から宮崎県の沿岸部でみられる魚です。2024年9月、アカメの進化史にまつわる研究成果が発表されました。

この記事では、アカメの生態について、またアカメの進化と生存にまつわる研究についてを紹介します。

日本固有種の巨大魚・アカメ

アカメは、主に高知県から宮崎県の沿岸部でみられる大型魚類です。日本固有種で種子島や屋久島などで見つかることもあります。

成魚の全長は70~100センチと大きく、「日本三大怪魚」のひとつ、また「幻の怪魚」として親しまれています。

光の反射により目が赤く輝くことが大きな特徴で、和名の由来にもなっています。目が赤く光る姿はまさに怪異のよう。とても魅力的な魚です。

アカメ(提供:PhotoAC)

幼魚のうちは暗褐色で、不規則な黄色や白色の斑紋と横帯が入っており、頭部には大きな縦帯が目立ちます。この模様は成魚につれ薄れていき、体長70センチほどになると帯と斑紋は完全に消え銀灰色の魚体となります。

幼魚期にみられる模様はアマモ場に擬態したものと考えられており、実際に、頭部を下に向けて静止し、アマモに擬態する行動も見られます。

稚魚・幼魚のうちは淡水域で過ごし、成魚になると淡水と海水が混じり合う汽水域や沿岸の浅い海、内湾などで過ごしています。

ゲノム解析から探るアカメの進化

大阪医科薬科大学医学部生物学教室の橋口康之准教授、水産研究・教育機構水産大学校の髙橋洋教授、竹下直彦教授、九州大学大学院農学研究院の三品達平助教(理化学研究所生命機能科学研究センター客員研究員を兼務)、福井県里山里海湖研究所の武島弘彦研究員、京都大学大学院農学研究科の中山耕至助教、水産庁の田上英明博士(研究当時、水産研究・教育機構所属)からなる研究グループは、南日本の太平洋岸に分布する日本固有の大型魚類である「アカメ」の全ゲノム解析を実施。

本種の遺伝的多様性が全体的にきわめて低く、少ない個体数で長期間存続してきたことを明らかにしました。また、それを可能にする仕組みとして、免疫などに関わる一部の遺伝子に一定の多様性が保たれていることもわかったそうです。

アカメ(提供:PhotoAC)

近年絶滅が危惧されているアカメの保全に必要な情報を得るため、宮崎・高知各1個体ずつの全ゲノムを解析し、分析を行いました。

絶滅危惧種の多くは、繁殖に関わる個体数が少ないことで遺伝的多様性が低下しています。遺伝的多様性が低下すると、ゲノムに有害な変異が溜まったり、近親交配(近い血縁関係にある個体間での交配)がおこると有害な変異が起こったりします。

アカメは個体数が少ないながらも長期存続してきた絶滅危惧種の一例であり、そのゲノムの特徴を分析することで、絶滅危惧種が長期存続する仕組みを解明することに繋がると期待されています。

希少種の保全では特定の機能を持つ遺伝子に注目することが重要

今回の研究により、きわめて低い遺伝的多様性を把握し、この魚の長期存続にとって重要な遺伝子に多様性が保たれていることが明らかになり、アカメを含む希少種の保全において、特定の機能を持つ遺伝子に注目することが重要であることがわかりました。

これは、公開的な保全対策を考えるうえで大きな意義を持つと考えられます。

アカメ(提供:PhotoAC)

研究者らのコメントによると、免疫系の遺伝子など多様性が個体の生存にとって重要な遺伝子は一定の変異を保っているものの、多くの有害変異がゲノムに蓄積している可能性があるといいます。

さらに、アカメの稚魚の生育に適した環境である河口のアマモ場は高知・宮崎ともに減少しており、アカメの存続は予断を許さない状況であり、生息環境とともに保全を着実に進めていくことが重要とのことです。

魚の保全には、その魚のことを知る必要があります。遺伝子のことを研究せずとも、まずは魚たちの生息環境を知り、ひとりひとりが意識することが大切です。

アカメを観察できる水族館もあるので、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

(サカナト編集部)

参考文献

細谷和海、藤田朝彦、武内啓明、川瀬成吾、内山りゅう(2019)、山渓ハンディ図鑑15 増補改訂 日本の淡水魚、山と渓谷社

松沢陽士、松浦啓一(2011)、ポケット図鑑 日本の淡水魚258、文一総合出版

ゲノム解析から探る 「幻の怪魚」アカメの進化と生存の歴史-京都大学

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