サメ飼育の未来
━━今後、チャレンジしていきたいことは何かありますか。
やっぱり今まで飼育が困難とされていたサメの飼育にチャレンジしていきたいなと思っています。
研究に関しては、水族館だけで研究を進めることはなかなか難しいと思いますので、大学であったり、あるいは研究機関と協力をして、サメに関する新たな発見みたいなものを見つけていく。それをまた来館者に紹介するような展示コーナーのようなものを今後作っていきたいという風に思っています。
また国内だけではなく、世界中の研究者の方と繋がりを持ち、共同研究のようなかたちで研究を進めていければ、また世界がどんどん広がってくると思います。こういったものに積極的に取り組んでいきたいと考えております。
━━ちなみに、飼育困難なサメは具体的にどんな種類のことでしょうか。
ヨシキリザメなんかですね。あとは深海性のサメ。現在(深海にすむ)イモリザメはなんとか飼育はできているのですが、それ以外にも深海のサメはたくさんいますから、そういうサメにも挑戦していきたいです。
あとは繁殖ですね。シロワニが1回繁殖に成功したきりですので、1回だけじゃなくて、2回、3回、4回……と、希少なサメを繁殖させていくっていうのもひとつの目標になってます。そう考えると、まだまだやりたいこと、やるべきことってのはたくさんあるのかなと思います。
━━シロワニの繁殖に関しては兆しはありそうですか?
まだわからないですね。受精すると、だんだんお腹が大きくなるっていう現象は出てくるんです。ただ、シロワニの場合、お腹が大きくなるという点だけでは判断ができないんです。
実はシロワニは、未受精の卵をお腹の中に溜め込むという習性があって、それをある時期に一気に出してしまいます。
なので交尾をして、だんだんお腹が膨れてきたからといって「これは妊娠してるな」っていう判断には至らないんです。それがすごく難しいところで、シロワニは今のところ飼育の全てが難しいです。
今のところまだ安定してできてる訳ではないので、もう少しなにか工夫できるところはないかと模索しています。
他のサメも繁殖に関しては謎に包まれているところが多いので、水族館で繁殖をさせながら、少しずつ明らかにできていければと思います。
来場者や読者へのメッセージ
━━今後、来場者の皆様や関わってきた方々に期待なさってることなどありましたら、ぜひ教えてください。
我々水族館スタッフは伝える仕事をしています。生き物の大切さや、 生態系の大切さとか、あと1番大事な命の大切さですね。そのあたりを来場者の方々、特に子どもたちに感じていただきたいです。
そして、その子どもたちがやがて親になった時に、またそのお子さんを連れてアクアワールド・大洗に来て、小さな頃学んだことを伝えていく……。そのような流れができるのが1番の理想かなと思っています。
我々としても、そういった良い学びができる水族館づくりに力を入れていきたいです。
━━水族館や飼育員の皆さんの今後についてもお伺いしたいです。
飼育員という職業には、技術や経験で積み重ねてきた知識があります。それを次の世代の飼育員さんに伝承していくことはとても大切ですが、難しい部分であるとも思います。
水族館の飼育員は、もちろんサカナが好きだというのは共通してあると思うのですが、それぞれのサカナに対する熱量の差や、知識・経験や技術にはそれぞれ違いがあります。
同じように仕事をしてきた飼育者がまた次の世代も同じようにできるのかというと、また難しいところです。それに関しては、個人個人が積極的に勉強をしたり修行をして身につけるべきだと感じています。
基本的な引き継ぎはもちろんできるんですが、それから先、プラスアルファで新たな展開をするためには個々の力が必要になると思いますね。
その辺は私もまだまだ未熟者ではありますが、下の世代にはこのことを意識して積極的に頑張っていってほしいですね。
━━最後に今後アクアワールド・大洗にご来館される方へ、何か一言メッセージをいただけますか。
サメの飼育員という立場から言わせてもらうと、 ぜひアクアワールド・大洗に来て、サメたちの魅力を堪能してほしいと思います。
アクアワールド・大洗では、見るだけではなくて、触れるコーナーもありますし、フードショップではサメ肉を使った料理なんかも食べられます。
目で展示を見るだけではなく、五感でサメを感じることができる体感型の水族館です。ぜひアクアワールド・大洗でサメを全身で味わって、楽しんでいただきたいなっていう風に思ってます。
※取材は2024年9月13日に行いました。展示内容など詳しい情報は、アクアワールド茨城県大洗水族館のホームページをご確認ください。
(サカナトライター:しょうじ)