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原料で多様化する<かまぼこ>の世界 高級品にはかつて深海魚が使われていた?

お正月など祝いの日に食べる「おせち料理」。

重箱の中に並ぶ多種多様な料理のひとつひとつに意味があり、中でも魚を原料にした「かまぼこ」はその色合いと形から縁起が良い食べ物として知られています。

そんなかまぼこですが、使う魚によっては色や風味、弾力も異なる食材として知られており、それにより価格も異なるようです。

おせち料理に欠かせない食材「かまぼこ」

おせち料理に欠かせない「かまぼこ」。

半月型をしたかまぼこは、おせち料理において初日の出(日の出)を連想させることから縁起物とされ、また、かまぼこの紅白は縁起が良い色とされています。

かまぼこ(提供:PhotoAC)

お正月にはかまぼこ以外にも紅白のものを食べる習慣があり、例えば青森県では、サケの飯寿司が紅白であることから縁起物として食べられていました。

お正月に欠かせない食材のひとつであるかまぼこですが、いつ頃から食べられるようになったのでしょうか。

かまぼこの歴史 平安時代の文献に登場

今ではかまぼこといえば紅白で半月型の食べ物というイメージですが、かつては異なる形だったといいます。

かまぼこの歴史は古く、平安時代である1115年の宴席で振る舞われた料理の中に登場したのが最も古い文献だそうです。かつてのかまぼこは現在のような形ではなく、魚のすり身を焼いたちくわのようなものだったといいます。

室町時代または桃山時代には現代のような板付けの「焼きかまぼこ」が登場し、当時の書物には原料にナマズを使っていたという記述も残っているといいます。

江戸時代後期になると、小田原でかまぼこの製造が盛んになり、江戸では小田原式の「蒸しかまぼこ」が主流となりました。

かまぼこはどんな魚からできている?

かまぼこの原料が魚であることは多くの方が知っているでしょう。ですが、具体的にかまぼこにどのような魚が使われているかは、知らない人もいるのではないでしょうか。

室町時代の書物では、原料にナマズを使用していたという記録が残っていますが、現代の日本ではナマズを使ったかまぼこは見られず、海産の白身魚を使用したものが主流のようです。

また、使用する魚によって色合いや食感が異なり、かまぼこの多様性を生み出しています。

多くの練り製品の原料として重宝<スケトウダラ>

スケトウダラ(提供:PhotoAC)

タラ目タラ科に属するスケトウダラは北方に広く分布する魚です。

本種の卵巣は「たらこ」や「明太子」の原料となりますが、肉はすり身となり練り物の原料として利用されます。

スケトウダラの身は透き通るような白色で、かまぼこだけではなく、ちくわやはんぺんなど多くの練り製品の原料として重宝されています。

高級かまぼこの原料として需要が高い<グチ>

シログチ(提供:PhotoAC)

ニベ科に属するシログチは通称「イシモチ」とも呼ばれる魚で、主に浅海の砂泥底に生息しています。

本種は鮮魚としての流通は多くないものの、高級かまぼこの原料として需要が高く、シログチを使ったかまぼこは強い弾力があることが特徴です。

かまぼこで有名な小田原のかまぼこでは、このグチ(シログチ)を原料としています。

クセのない上品な味わいと甘みは一級品<エソ>

マエソ属の魚(提供:PhotoAC)

釣りではゲストとして有名なエソ(エソ科の総称)ですが、高級な練り製品の原料として重宝されている魚です。

エソは、その骨の多さから食用として敬遠されることも少なくない魚ですが、クセのない上品な味わいと甘みは一級品。

エソはかまぼこやじゃこ天、ちくわなど多くの練り製品に用いられるほか、エソの皮で作った「皮ちくわ」と呼ばれる珍味も存在します。

これらの魚以外ではアジなどの青魚が使用されることがあり、その場合にはかまぼこの色合いがやや黒っぽくなるようです。

かまぼこで有名な小田原

タラ、エソ、グチ。

これらの魚は練り製品の原料としては全国的に知られている魚種であり、かまぼこの一大産地である小田原でもグチを使ったかまぼこが作られています。

しかし、かつての小田原ではギス(オキギス)と呼ばれる深海魚がかまぼこの主原料でした。

かつて小田原のかまぼこで主原料だった<ギス>

現在、小田原のかまぼこといえばグチを使用したものが有名ですが、江戸時代から明治時代後半まではギス(オキギス)と呼ばれる深海魚が主原料でした。

ギスは名前に「キス」と付くものの、キス科とは異なるグループに属し、生息する水深もキス科と比較して深いことが知られています。ギスを主原料として作ったかまぼこはなめらかで白く、それでいて弾力があることが特徴です。

ギスの資源量減少にともないギスを主原料としたかまぼこの製造は衰退したものの、現在も一部の製造業者が副原料もしくは主原料として用いています。

特に、ギスを主原料にしたかまぼこは小田原かまぼこの中でも最高級品です。

練り製品にはいろいろな魚が使用されている

このように、かまぼこには様々な魚が使われており、原料によって味や風味、色、弾力などが異なります。

皆さんがよく食べているかまぼこにも様々な魚種が使用されており、原材料を見ればその多様性がわかります。

使われている魚を知ることで、かまぼこの楽しみ方がより広がります。まずは、今年のおせちのかまぼこの原料を確認してみてください。

(サカナト編集部)

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サカナト編集部

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