サケの名前でよく見るのが、秋鮭や時鮭。これはどちらも白鮭の別称です。このふたつ、どういった基準で名前が変わるのか知っていますか?
この記事では、時鮭と秋鮭の違い、白鮭以外の鮭について紹介します。
<白鮭>は日本で一番親しまれているサケ
白鮭は日本で一番親しまれているサケの種類です。身の色が薄く、白っぽく見えることから「白鮭」と呼ばれています。養殖は難しく、市場に出回るほとんどが、日本で水揚げされている天然のサケです。
秋田県南部の由利地方に流れる子吉川にはサケの絵図が刻まれた「鮭石」と呼ばれる石がいくつか発見されており、これは約2000年前にサケの豊漁を祈り刻まれたものだと考えられています。
北海道に古くから住むアイヌ民族もサケと身近な生活を送っていました。サケを「カムイチェプ(神の魚)」と呼び、食材として利用しました。また、サケにまつわる物語や歌も多く、アイヌの人々にとって親しみ深い魚だったことが窺えます。このように、大昔から現在まで日本人に親しまれている魚であることがわかります。
<秋鮭>秋味とも呼ばれる旬の白鮭
産卵のため、自分が産まれた北海道や東北の河川へと戻ってくる9~11月頃のサケは、秋鮭、秋味(あきあじ)とも呼ばれます。産卵間近で生殖巣が成熟しており、メスが抱える卵も「生筋子(なますじこ)」として出回ります。
卵や白子を成長させるために体の栄養分が使われているため、身に脂が少なくさっぱりとした味が特徴です。
<時鮭>春から初夏にかけて獲れる
時鮭は5~7月に北海道に回遊してきた若い白鮭のことを指します。旬である秋とは異なる時期に獲れるため、時を間違えた鮭という意味でトキシラズとも呼ばれています。時鮭はロシア北部のアムール川で産まれ、海を回遊している途中に北海道で漁獲された白鮭のことを指します。
産卵前に獲れる秋鮭とは違い、卵や白子に栄養をとられません。そのぶん栄養が行き届き、脂がのっていてふっくらしている身が特徴です。
<紅鮭>や<銀鮭>は白鮭とは違う種類!
上記に挙げたサケのほかに、紅鮭や銀鮭という名前を聞いたことがある人も多いと思います。これらは白鮭の別名ではなく、別の種類のサケです。
紅鮭は、北大西洋、ベーリング海、オホーツク海に分布していて、日本国内での水揚げ量は少ないです。産卵時期になると全身が真っ赤に染まることから紅鮭と名づけられました。身の味がしっかりしていて、旨みが強いことが特徴。成長が遅く、病気に弱いため、養殖には不向きで、出回っているものは天然のものが多いです。
銀鮭は北太平洋にすむサケで、外観・生態ともに白鮭とよく似ています。体色が銀色であることや、背中から尾にかけて小さな斑点で見分けられます。また、北海道の河川には遡上しません。成長が早いため養殖に向いており、特に東北で盛んにおこなわれています。一時は東日本大震災の影響を大きく受けたものの、現在では復興し震災前を上回る水準で推移しています。
サケは日常的な魚ですが、種類や名前の違いはあまり気に留めず食べてしまいますよね。いろいろな呼び名があるのも、味の微細な差を感じ取ってそれぞれを美味しく食べようとする、日本ならではの習慣です。サケに限らず、魚の別称や名前の由来を知ることで、日々の食卓がもっと楽しくなるでしょう。
(サカナト編集部)