日本には約4600種の魚類が生息しており、それぞれの種が標準和名という日本語の名前を持っています。
中でも今回は「竜」にちなんだ名前を持つ魚たちをご紹介します。
リュウグウノツカイ
リュウグウノツカイはアカマンボウ目・リュウグウノツカイ科に属する魚です。
本種は言わずと知れた大型の深海魚であり、タチウオをそのまま大きくしたような体型や、赤く目立った背びれ・腹びれを持つことが特徴です。漢字表記は「竜宮の遣い」と考えられているものの、はっきりした名前の由来は不明とされています。その一方で、神々しい姿からこのような名前を付けたのではないかとも考えられているようです。
リュウグウノツカイ科は世界で3種が知られており、日本国内では本種のみが記録されています。リュウグウノツカイは通常、沖合の深場に生息していますが、浅海に出現することもあるのです。稀に波打ち際に打ち上ることもあり、その度に人々を驚かせます。
アカマンボウ目の魚にはリュウグウノツカイ以外にもユニークな名前の魚がおり、日本ではテングノタチやフリソデウオなどが知られています。他にも本種は英語では「Oar fish」とも呼ばれており、これは特徴的な腹びれに由来するそうです。
リュウグウノヒメ
リュウグウノツカイがいれば、リュウグウノヒメという魚もいるのをご存じでしょうか。
リュウグウノヒメはスズキ目・シマガツオ科の魚で、名前が似ているもののリュウグウノツカイが属するアカマンボウ目とは異なるグループ(スズキ目・シマガツオ科)の魚です。
シマガツオ科の魚はいずれも黒っぽい見た目をしており、それは本種も同様です。ただし本種は他のシマガツオ科の魚類とは異なり、背びれと臀びれが著しく発達します。特に幼魚では背びれと臀びれがよく目立つので、ベンテンウオを除くシマガツオ科と容易に区別することができます。沿岸~沖合の中層に生息するため、底引き網や沖合の釣りで稀に漁獲されるものの基本的には食用にならないそうです。
タツノオトシゴ
タツノオトシゴはトゲウオ目・ヨウジウオ科・タツノオトシゴ属の小型種です。日本のタツノオトシゴ属は10種類以上が知られており、汽水域から浅海のサンゴ礁、藻場などに生息しています。
硬い体と管状に伸びた口が特徴的な魚でダイビングではもちろんのこと水族館でも人気があります。そのユニークな姿から、かつて魚とは異なる生物とも考えられていました。しかし、よく観察してみると胸びれ、背びれ、臀びれ、鰓孔(えらあな)など魚の特徴をいくつも持っていることが分かるでしょう。
海外ではこの姿から「シーホース(海の馬)」と呼ばれていますが、日本では竜にちなんで「竜の落とし子」と命名されたそうです。縁起が良い魚として知られ、辰年の今年は全国の水族館でタツノオトシゴが展示されました。
タツノオトシゴはダイビングや観賞魚としてだけでなく、漢方や薬膳の材料としての需要が高く絶滅が危惧されている魚でもあります。ワシントン条約附属書Ⅱではタツノオトシゴ属全種を指定しており、商業目的の国際取引も可能ではあるものの、輸出国政府の発行する輸出許可書が必要です。ただし日本はこの種を留保しています。
このように日本には竜にちなんだ名前の魚たちがいます。一口に竜にちなんだ魚といってもその姿や分類群は様々であり、想像力を搔き立てられますね。
(サカナト編集部)