滋賀県立琵琶湖博物館は7月18日から11月23日まで、企画展示「博物館はタイムマシン ―魚類学者がみた琵琶湖―」を開催します。
江戸時代から現代に至るまでの琵琶湖の魚類研究の歴史をたどりながら、国内外に所蔵されてきた貴重な標本を通じて、生きものの記録を残す意義や標本が持つ学術的価値を紹介します。
博物館はタイムマシン ―魚類学者がみた琵琶湖―(提供:滋賀県立琵琶湖博物館)標本から読み解く琵琶湖の自然史
琵琶湖は古くから国内外の研究者の関心を集めてきた場所として知られています。
江戸時代には、その成り立ちにまつわる伝説とともに広く知られ、多くの博物学者が湖やそこに生息する生物の調査を行ってきました。その過程で収集された標本は、現在も世界各地の博物館や研究機関に保管されています。
今回の展示では、こうした標本を通じて、過去の琵琶湖にどのような生きものが生息していたのか、また環境の変化とともに生物相がどのように移り変わってきたのかを紹介します。
展示では、標本が単なる収蔵資料ではなく、生物の存在を証明する科学的な証拠であることにも焦点を当てるといい、過去に収集された標本から新たな知見が得られる事例も交えながら、その重要性を解説します。
国内外から集まる貴重なタイプ標本
見どころの一つとなるのが、新種の記載時に基準となった「タイプ標本」の展示です。タイプ標本とは、その生物種の特徴を定義するために用いられた標本であり、分類学上きわめて重要な資料とされています。
会場では、ビワコオオナマズやイワトコナマズ、ビワマス、イサザなど琵琶湖を代表する魚類のタイプ標本を展示。学術的に重要な資料を目にできる貴重な機会となりそうです。
ビワコオオナマズのタイプ標本(国立科学博物館所蔵)なかには、ドイツ人医師・博物学者のシーボルトが江戸時代に日本から持ち帰った標本や、海外の研究機関に所蔵されてきた資料も含まれており、一部は国内初公開となります。
これらの標本を通じて、琵琶湖固有種の研究史や、生物分類学の発展についても知ることができます。
シーボルトゆかりのトキ標本が初の“里帰り”
今回の企画展では、オランダのナチュラリス生物多様性センターが所蔵するトキのタイプ標本も展示されるといいます。この剥製は、シーボルトが日本で入手した個体をもとに学名が付与されたとされる貴重な資料です。
(ナチュラリス生物多様性センター所蔵/提供:滋賀県立琵琶湖博物館)同標本が日本で展示されるのは初めてで、滋賀県との関わりが指摘されることから、“里帰り”展示として注目されています。江戸時代に製作された剥製が現存している例は限られており、自然史資料としても高い価値を持っているものです。
また、展示では標本として残されなかった生きものにも光を当てるといいます。
江戸時代の文献や絵図に登場する謎の怪魚「ガナイタ」や、全長約2.7メートルに達したと伝えられる巨大ナマズについて、記録をもとに復元模型を制作し展示されます。
さらに、江戸時代から現代までに収集された魚類標本のコレクションを時代ごとに紹介し、人間活動による環境変化と琵琶湖の生態系の変遷を振り返るとのこと。研究者たちが未来へ託した標本群を通じて、過去・現在・未来の琵琶湖を考察する内容となっています。
イベントや施設についての詳細は、滋賀県立琵琶湖博物館の公式ホームページに掲載されています。
※2026年7月2日時点の情報です
(サカナト編集部)