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水族館で<ガラスを叩かない・フラッシュNG>はなぜ? 宮島水族館の飼育員さんに聞いてみた

暑い日が続くと、涼しげな水族館へ出かけたいと考える人もいるのではないでしょうか。

水族館に行くと、よく「フラッシュ撮影はご遠慮ください」「水槽をたたかないでください」「触らないでください」といった注意書きを目にします。

水槽の注意書き(撮影:高良あさひ)

「魚がびっくりするからかな?」とは想像できますが、実際にどのような影響があるのか知る機会は意外と少ないものです。

そこで、広島県廿日市市にある「みやじマリン 宮島水族館」の飼育員さんに聞いてみました。

水槽をたたくことによる影響

水槽をたたいてはいけない一番の理由は、「魚が驚いてしまうから」。

例えば、群れで泳ぐイワシは、大きな音や振動に驚くと群れから一匹だけ離れてしまうことがあるといいます。さらにパニックになると、水槽から飛び出してしまったり、水槽の壁に激突してしまったりすることもあるそうです。

そのため、イワシが群れで泳いでいる水槽には飛び出し防止のネットが設置しています。

イワシの群れのイメージ(提供:PhotoAC)

また、ハタやカサゴといった岩場の周りでじっと暮らす根魚(ねざかな)たちは、驚くと岩陰や隙間に身を隠します。すると、本来のゆったりとした姿を見たくても、なかなか見つけられなくなってしまいます。

影響があるのは生きものだけではない

さらに、水槽を叩くと、生きものだけではなく水槽そのものにも影響を及ぼします。

水族館に設置される水槽は、膨大な水圧に耐えるためにアクリル樹脂で作られています。このアクリル樹脂は、水圧には強くても傷には弱いという特徴があります。

硬いものや先の尖ったものでたたいたり、ぶつけたりすると、簡単に傷が付いてしまうそうです。傷ができると観察する際に邪魔になるのはもちろん、とても高価で交換にも大きな手間を要することから「傷がついたから新しい水槽にしよう!」とはいかないのです。

スマートフォンやカメラを持って展示を見ている時、子どもがおもちゃや購入したお土産を手にしたまま水槽に近づく時など意図せず水槽に物をぶつけてしまうことがあります。

生きものを驚かせないため、水槽を傷つけないために、水槽をたたいたり触れたりしないように心がけたいですね。

フラッシュ撮影は刺激が強すぎる? 特に敏感な生きものたち

強い光で被写体を鮮明に写せるフラッシュ撮影も、水族館では控えるべき行為です。

明るい場所の展示に慣れている魚たちはもちろん、照明が控えめな暗い場所で展示されている魚たちは特にフラッシュの光でパニックになりやすいのだといいます。

一度パニックになった魚はエサを食べる量が減るなど、体調や行動に影響が出ることもあるそうです。

フラッシュ撮影禁止の説明書き(撮影:高良あさひ)

宮島水族館では、テッポウウオが水鉄砲でエサを撃ち落とす「テッポウウオのシューティングタイム」というイベントが開催されています。

そんなテッポウウオは刺激に敏感なため、驚いてしまうとエサを撃ち落とす回数が減ってしまうそうです。

テッポウウオ(撮影:高良あさひ)

せっかくテッポウウオの狩りの様子を見に来ても、フラッシュの影響で本来の姿が見られなくなってしまっては、来館者にとってもテッポウウオにとっても残念な結果になってしまいます。

実際に飼育員さんも、そのような日は「水をあまり飛ばさなくても温かい目で見てあげてください」と来館者へ呼びかけているそうです。

イカも音や光などの刺激に敏感

イカも光や水槽を叩く音などの刺激に対して非常に敏感だといいます。

強い刺激を受けると墨を吐くことがあり、水槽の水を汚してしまいます。タコも墨を吐きますが、イカの墨は油分が多く粘性も高いため水が汚れやすいそうです。

さらに、墨を吐くこと自体がイカにとって大きな負担となり、体力が落ちて弱ってしまうこともあるため、飼育員さんも運搬の際には特に気を遣うのだとか。

また、誰かが撮影したフラッシュの光が、水槽に反射して周囲の人の目に入ってしまうこともあります。展示されている生きものたちはもちろん、一緒に楽しむ人たちへの配慮も大切です。

ふれあい体験ブースで気を付けること 大切なのは手の温度?

今年で開館15周年を迎えたみやじマリン 宮島水族館は「いやし」と「ふれあい」をテーマに掲げ、来館者が実際に生きものと触れ合いながら学べるよう、さまざまな工夫がされています。

飼育員の皆さんが生きものに触れる際に気をつけていることを聞いてみると、水中で暮らす生きものは人間よりも体温が低いため、手を冷やしてから生きものに触れることだといいます。人の体温のまま触れると、生きものに負担をかけたり、体を守るための粘液が剥がれてしまったりすることがあることあるそうです。

同館の触れ合いブースには、生きものに触れる際の注意点をまとめた大きな看板が設置されています。短い言葉とひらがなを中心とした分かりやすい表現で、小さな子どもでも理解しやすい内容になっていました。

ふれあいの磯のあそびかた 手洗い場のすぐ横に掲示されている(撮影:高良あさひ)

今回の取材を通して感じたのは、みやじマリン 宮島水族館では生きものへの負担をできる限り減らしながら、来館者が実際に触れて学べる環境づくりが徹底されているということです。

こうした一つひとつの配慮があるからこそ、安心して触れ合い体験を楽しめるのだと感じました。

飼育員さんおすすめ!もっと水族館を楽しむコツ

水族館を楽しむコツも聞いてみました。

すると「疑問に思った事をそのまま家に持って帰るのではなく、見かけた飼育員にぜひ聞いてみてください!」と笑顔で話してくれました。

「迷惑じゃないか?こんなこと聞いてもいいのかな?と不安になります」と正直に疑問をぶつけてみたところ、「飼育員は伝えたり教えたりすることが好きな人が多いので、ぜひ」とのことでした。

また、飼育員が見当たらない時は「水槽の横にある生きものの解説を読んで、自分の知識としてお子さまや身近な人に披露してください」と話してくれました。

水族館の中で一番好きな生きものを探したり、群れで泳いでる魚のうちの1匹の動きをみつめたり……といった観察と一緒に、解説版を読んだり、飼育員さんと交流をしたりと、水の生きものたちの知識を深めることも楽しんでみてください。

親子で守りたい水族館のマナー

今回は、みやじマリン 宮島水族館にご協力いただき、水族館のマナーに関するお話を聞きました。

みやじマリン 宮島水族館では現在15周年イベント開催中(提供:高良あさひ)

話を聞く中で、「生きものたちとの出会いを大切にしてほしい」「体験を通して興味や思い出を作ってほしい」という飼育員の皆さんの熱い思いに触れることができました。

注意書きについても、どうしても注意が必要な場所には大きく目立つ注意書きを設置し、それ以外は水槽の端に小さな禁止マークを表示するなど、できる限り景観を損なわないよう工夫されていました。

特に、水槽の上部が開いている開放展示では、つい触れてみたくなることもあるかもしれません。そんなときは、まず周囲を見渡し、触れてもよい展示なのかを確認してから楽しみましょう。

生きものたちを守る“大切なサイン”

水族館にある注意書きは単に「禁止行為」を伝えるためのものではありません。生きものたちを守り、来館者みんなが気持ちよく過ごせる環境をつくるための、“大切なサイン”でした。

次に水族館を訪れた際は、水槽の中の生きものだけでなく、その周りにある小さなサインや工夫にも目を向けてみてはいかがでしょうか。

ライター:高良あさひ/取材協力:みやじマリン 宮島水族館

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