海藻は成長時に二酸化炭素(CO2)を吸収しますが、浅い海で枯れて分解されると、取り込んだ炭素が再びCO2として大気に戻る可能性があります。
そのため、海藻によるCO2吸収を気候変動対策につなげるには、吸収した炭素を大気に戻さず、長期間にわたって隔離することが重要です。こうした考え方から、増殖させた海藻を深海へ沈設する「深海ブルーカーボン」の実証が進められています。
海藻を深海に沈めることで炭素を大気から隔離できる可能性がある一方で、日本近海の水深1,000m級で海藻がどの程度残存し、どのように分解されるのかを示す実測データはこれまで十分にありませんでした。
こうした中、株式会社BLUABLEが東京都の事業として実施した実証で、約1,000mの深海に沈設した海藻サンプルの回収に国内で初めて成功しました。
今回の回収は、深海における海藻の分解挙動や炭素隔離の可能性を検証するための基礎データにつながる成果と考えられています。
水深10m・500m・1,000m級で海藻の変化を比較
今回の実証では、伊豆大島沖にアントクメやコンブのサンプルを沈設。サンプルは係留系に設置したバッグに入れ、約50日間にわたって深海に沈設されました。
その後、8月1日に水深1,000m級のサンプルを回収したほか、比較対象として水深500m級と10mでもサンプルの回収を行いました。
回収した海藻については、残存重量から分解率を調べるほか、炭素含有量や菌叢などを分析。また、水深500m級では赤色LEDを用いた海藻の経時的な撮影にも成功しており、深海環境での状態変化を記録するデータが得られています。
500m級での海藻サンプルの経時的な撮影に成功、赤色LEDにて海藻を撮影(黒色のものがアントクメ)(提供:株式会社BLUABLE)今回の取り組みには、伊豆大島漁業協同組合、マリンオープンイノベーション機構(MaOI機構)、東京海洋大学、広島大学、北海道大学、富士通などが協力しています。
採取から分析までの一連の手順を構築し、今後の実証につながる基盤づくりも進めているそうです。
100日目の回収で時間経過による変化を検証
今回の実証で回収されたのは、沈設から約50日が経過したサンプルです。
今後は沈設から100日目のサンプルも回収し、50日目の結果と比較することで、深海での海藻の分解や炭素の残存状況が時間とともにどう変化するのかを調べる予定だといいます。
さらに、水深10m、500m、1,000m級のデータを蓄積し、生態系への影響を考慮した海藻の沈降量シミュレーションと組み合わせることで、深海ブルーカーボンによるCO2隔離量の定量化を目指すとしています。
BLUABLEは今後、対象とする海藻の種類や沈設規模を広げ、深海ブルーカーボンを活用したJブルークレジットなどのカーボンクレジット創出モデルの確立を目指すとのことです。
(サカナト編集部)