「鯖」は夏の季語です。江戸時代には春から秋にかけて、篝火を焚きながら鯖漁が行われていました。そのことから、「鯖火」という季語ができました。また、夜の空が曇っている日、海上に霞が出ている日を「鯖日和」と呼んでいたとか。
このように、季語から昔の漁や魚の様子についてわかることがあります。今回は夏の魚季語とその時代の魚の関係などについて見ていきたいと思います。
「鯖火」はサバビと読む!
「舩ごとに二ツの篝を照らし万天を焦がす。」
『日本山海名産図会』に書かれた、江戸時代の鯖漁の様子です。「万火天を焦がす。」とありますね。今では大きな網で魚群をすくう巻き網漁が鯖の主な漁法ですが、昔は夜に火を焚いて漁をする「鯖船」「鯖釣」「鯖火」が夏の夜の風物詩だったのでしょう。
夜の霞の中、たくさんの船が出て漁のための篝火が煌々と赤い様子が目に浮かびます。
他にも、季語となった魚をみていきましょう。
皮まで夏の季語になる魚も
季語は食文化の影響を受けていることが多いです。「鱧(ハモ)」は関西の夏に欠かせない食べ物でした。
祇園祭や天神祭では、祭り鱧が食べられます。江戸後期には120種ほどの鱧料理があったそう。
骨切りし、湯引きしたハモを牡丹のように見せる「牡丹鱧」「鱧料理」だけでなく「鱧の皮」まで夏の季語となっています。俳句を通して昔の食生活まで学ぶことができるのですね。
新しい季語「グッピー」と「熱帯魚」
近代、日本で季語として扱われ出している魚もいます。それは熱帯魚です。
熱帯魚とは観賞用に輸入された熱帯地方の淡水魚です。夏の水槽に泳ぐ様子が涼しげなこと、熱帯地方の魚ということから夏の季語になりました。1960年ごろから熱帯魚ブームが起こり、「グッピー」「エンゼル・フィッシュ」など「熱帯魚」の魚種が子季語として扱われるように。
子季語というのは、代表的な季語に関連する季語のことで、親季語の変化形・バリエーションともいわれます。「熱帯魚」が親季語で、それに付随する種名が子季語として扱われているということですね。
エンゼル・フィッシュは俳句の五文字、日本語の様式に合わせて「天使魚(てんしぎょ、てんしうお)」と表されることもあります。
江戸時代には観賞用の魚「金魚」が夏の魚の季語として多く使われましたが、「熱帯魚」は近代・現代のイメージとして用いられることが多いです。
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