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日本における水族館文化

歴史の教科書でもご存じの通り、岩倉使節団が1871~1873年に欧米を訪れます。その目的は簡単に言えば各国の技術や文化を学び、日本を欧米に負けない近代国家にすることでした。岩倉使節団はその一環として欧米の水族館も訪れました。

その後ロンドン動物園のフィッシュハウスと同じように、上野動物園内に「観魚室(うをのぞき)」がオープンしました。

現在の上野動物園(提供:PhotoAC)

さらにそのあと、うをのぞきよりもヨーロッパの本格的な水族館に近い「和田岬水族館」が神戸に登場します。

和田岬水族館は当時帝国主義の日本が支配していた台湾で捕獲した水族を展示することで、イギリスと同じく権力誇示にもなりました。運営スタッフがそれらを意図していたかは別として、欧米に何とか追いつこうとしていた当時の日本人の目にはそうした展示が煌びやかなものに見えたはずです。

同時に、室町時代にやってきて江戸時代に金魚鉢(=ガラスケース)と共に広まった「金魚ブーム」のように、日本においても古くから水族を様々な角度から観察したいという願望はあったようです。

意外な視点で水族館を読む

今日における水族館の原型の裏には、こうした歴史とは切っても切れない繋がりがあったのです。それは今後の水族館を考えるうえで大変参考になるのではないでしょうか。

今回紹介した内容は『水族館の文化史―ひと・動物・モノがおりなす魔術的世界』(溝井祐一著、勉誠出版刊)、『新版 水族館学』(鈴木克美・西源二郎著、東海大学出版部)から内容を整理し、また聖書やヨーロッパ文化等も再度勉強しなおして考察しながら執筆しました。

上記2冊も大変面白い本で、また一見関係なさそうな歴史や文化なども意外なほど水族館に結びついていることがわかります。普段何気なく見ているモノも深く考えて見ていけば、意外なところで水族館と結びつくのかもしれませんね。

(サカナトライター:みのり)

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みのり

みのり

センス・オブ・ワンダーを大切に

北里大学海洋生命科学部卒・元水族館飼育員。魚類・クラゲはもちろん、イルカの飼育も担当。非常に多趣味で、生き物観察やフィールドワークはもちろん、映画や読書、ゲームも好き。多趣味ゆえの独自の視点、飼育員視点を交えつつ、水生生物やそれを取り巻く自然環境、文化、水族館の魅力を発信していきます。

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