ダイバーにはお馴染みの魚・キンギョハナダイ。実はこの魚、とても紳士的な“求愛”をするのです。
今回は伊東の現地ガイドである筆者が日々観察している、キンギョハナダイの求愛・産卵の一部をご紹介いたします。
ダイビングの華<キンギョハナダイ>
キンギョハナダイはハナダイ科ナガハナダイ属に分類される魚の一種。オスは胸鰭に2色の斑点があり、婚姻色を出すとオレンジ色の縞模様が現れます。
伊東での産卵盛期は6〜10月ごろ(2023年時点)で、伊東では数千匹の群れができます。
メスはオレンジ色で、目元にアイシャドウのような紫色がついています。オスに性転換する際には紫色がなくなります。
キンギョハナダイの求愛STEP
キンギョハナダイの求愛にはいくつかの段階があります。今回は6つのSTEPに分けて説明します。
STEP1:君のことが好きだ!(アピールタイム)
キンギョハナダイは求愛する際、オスが下にいるメスに対してU字に動きます。これが彼らなりのアピールで、「U字スイム」と呼ばれています。
STEP2:君の気持ちを待ってるからね(メスを待つ)
オスのアピールが終わると、オスはメスがその気になるまで待機します。これこそが、キンギョハナダイのオスが“紳士”と呼ばれる所以です。
この時メスたちの上でカラフルな胸鰭を広げ、その場で腹鰭を激しく震わせます。全力を振り絞っているようで、筆者はこの姿にときめきます。
STEP3:待ってたよ!(メスを迎えに行く)
メスはオスの魅力のほか、周囲に卵を食べる天敵がいないか確認をしつつ、「OK!」と判断するとオスに近づいていき、ほっぺを近づけます。オスはその様子を感じ取ると、メスを迎えに近づきます。
上記写真は1匹のオスに2匹のメスが近づいているように見える、かなりイレギュラーなシーンですが、通常この行動は1対1で行われます。
STEP4:本当に僕でいいの?(並走して相性を確かめる)
近づいたオスとメスはなんと、ほっぺをくっつけて数センチ並走します。
ここで相性が悪く感じたり、周りに天敵が接近していると産卵まで結び付かず解散してしまいます。並走する時間は1秒未満。緊張の走る瞬間です。
これは筆者の妄想ですが…、「OK?本当に私でいいの?」と声が聞こえてきそうです。
STEP5:巻きつく、そして産卵
並走するとそのままの勢いでオスがメスに巻きつき、放卵放精が行われます。メスの体に巻きつくことで、成功率を高めるように産卵していると考えられています。
STEP6:解散・食べられる卵
この時、短い時間ですが、メスは気絶します。そして、オスもメスも産卵が終わると即解散し、次の産卵パートナーを探しに行きます。
産卵をすると一目散に近づいてくるのが、キンギョハナダイの天敵と言える「メジナ」たち。彼らは産卵が始まる前から産卵エリアに現れ、産卵した卵をどんどん食べて行きます。
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