水族館勤務の経験を活かし、水族館のレポート記事やフィールドでの体験などさまざまな視点で記事を執筆するサカナトライター・みのりさん。
そんなみのりさんにインタビューを実施し、サカナを好きになったきっかけや、サカナトライターとして記事を書く活動をしていることについて、お話を伺いました。
みのりさんによると、<水族館に勤務した経験があるからこそ見える視点>があるのだといいます。
サカナを通して世界が見える 奥深さに惹かれて
━━簡単な自己紹介をお願いします。
みのりと申します。海洋系の大学を卒業し、水族館で飼育員として勤めていたこともあります。今でも時々、水族館関連のイベントなどに参加させていただいています。
━━なぜサカナトライターに応募したのですか?
魚や水生生物、それにまつわる環境や文化、水族館の情報を広める活動をしたいと思ったからです。水族館飼育員の時代に「色んな生き物を広めたい!」と思いながら働いていた想いに近いです。
━━みのりさんが、初めてサカナを意識したきっかけやエピソードを教えてください。
元々サカナに限らず、幼少期から無意識のうちに生き物全般が好きで、特に恐竜は図鑑を丸暗記するくらい好きでした。なので、特別サカナだけが好きというわけでもなく、好きなもののひとつくらいでした。
しかし両親は僕のサカナの知識が豊富なことに気づいていたらしく、大学受験の際に猛烈に水産系を学べる大学を勧められ、そのままそちらの道に進むことを決めました。割と流されるようにサカナを意識するようになったと思います(笑)
━━当初はサカナについて強く意識はしていなかったのですね。今はなぜサカナに惹かれるのですか?
サカナを通して世界が見えるからです。生き物としてのサカナはもちろん面白いですが、私たちの食卓にやってくる食べ物としてのサカナ、信仰や畏怖の対象としてのサカナ、水族館やアクアリウムといった鑑賞のためのサカナ。サカナとそれを取り巻く環境や文化を調べるだけで世界が見えてきます。
かつてはサカナを「面白い生き物」としか捉えていなかったですが、そのことに気づいたとき、サカナの持つ奥深さに惹かれていきました。
━━みのりさんのサカナに対する視点を培った本はありますか?
『ジンベエザメの命、メダカの命:水族館・限りなく生きることに迫る』という本です。
「須磨海浜水族園」や「いおワールド・かごしま水族館」の館長を歴任された吉田啓正さんの本です。
サカナの飼育展示、水族館を運営することの想いや深い考えを書き連ねた本で、「水族館の在り方」「サカナを飼育すること」を常に考え続けていた私は、この本に大きな影響を受けました。
自分の「楽しい!」を信じて記事を書く
━━普段幅広いテーマで記事を執筆いただいていますが、記事を書くときに意識していることや、テーマを見つけるコツはありますか?
なるべく自分の体験談や率直な感想を入れるようにしています。図鑑やネットに載っていることをそのまま書いてもあまり面白い記事になりません。私にしか引き出せない、私自身が感じたことをそのまま書くことで、内容にオリジナリティを持たせることを意識しています。
テーマを見つけるコツは、とにかく楽しむこと。自分が楽しいと感じた体験談を文字に起こすだけで、割とすごい文字量になります。それらを上手く区切って独立した記事にするだけで、2〜3記事ほどの文字量になります。
無理して「ネタを探さなきゃ」ではなく、「私自身が楽しい!」と感じることができれば、自ずと記事のアイデアは浮かんできます。だからこそ、定期的にフィールドワークに出かけています。
━━海外でのフィールドワークについて書いた、「シンガポールの<マングローブ林>探索記」は読んでいてとても楽しく、また実際に行きたいと思わせてくれる素敵な記事でした。この時のこぼれ話はありますか。
「楽しい探索記!」という感じで書きましたが、実は当時、私はものすごく疲れていて、全く探索のやる気がありませんでした。普通に観光するのも好きなので、安全なシンガポールの町を探索したかったのですが、一緒に行った友人がマングローブを探索すると言って聞かず、死んだような顔をしながら探索していました。
記事に登場するミズオオトカゲですが、実はかなり遠くを泳いでおり、見られたのは本当に一瞬でした(もう1枚ある写真は別日に撮影したものです)。そのため、うきうきした気持ちでマングローブに来た友人は何も見られず、逆に疲れ果ててやる気のなかった私だけが見つけられました(笑)
これは記事にも書いた通り、まさに私の「水生生物を一瞬で見つける力」が炸裂した瞬間でした。「な、なんで……」と落胆する友人と「いいもん見れたわ~」と少し元気になる私。日頃培っていた、生き物を見分ける力に救われた瞬間でした。
━━ワレカラをテーマにした記事もとても印象的でした。なぜワレカラに興味を持ったのですか?
正直、最初は興味がありませんでした。ただ大学の卒論の時に、せっかくだから誰も知らないような生き物を一年間勉強して研究してみようと思い、たまたまワレカラに出会いました。それがワレカラを深く知るようになったきっかけです。
全く知らない生き物を1年間にわたり集中的に勉強したので、知識も増えましたし、興味も湧きました。同時にワレカラが持つ不思議な魅力や人々との関わり、生態系における役割など様々な一面を知ることができましたね。
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