環境省沖縄奄美自然環境事務所は10月29日、沖縄県那覇市にある「天久ちゅらまち公園」の池からミステリークレイフィッシュが発見されたと発表しました(外来ザリガニ「ミステリークレイフィッシュ」沖縄で国内初定着か 那覇に複数の成熟個体-琉球新報)。
ミステリークレイフィッシュは本来日本に生息しないザリガニの仲間ですが、今回成熟サイズが複数個体見られたことから国内初となる定着の可能性があるとのことです。
単為生殖できるザリガニ
ミステリークレイフィッシュ(Procambarus fallax f. virginalis)はまたの名のマーブルクレイフィッシュ、マーモクレブス(ドイツ語で大理石模様のザリガニ)とも呼ばれており、1990年代中盤にドイツでペットとして流通していた個体から報告されました。
2003年にNatureで公表された論文「Parthenogenesis in an outsider crayfish」ではミステリークレイフィッシュが単為生殖が可能であることを示し、十脚目で単為生殖をおこなう生物は世界初であったことから話題になったそうです。
この不思議な繁殖方法からこのザリガニは「ミステリークレイフィッシュ」と呼ばれるようになったと言われています。
アメリカザリガニとの違い
謎の多いミステリークレイフィッシュですが、遺伝子解析や形態的特徴からフロリダ半島~ジョージア州南部を原産地とするスロウザリガニ(Procambarus fallax)と近縁であることが分かっています。
また、ミステリークレイフィッシュは日本に広く分布するアメリカザリガニに似ていますが、本種は体色が青~緑色を帯びた灰色であることや頭胸甲にマーブル模様をもつこと、頭胸甲背面の左右の線が離れることからアメリカザリガニと区別することが可能です。
ミステリークレイフィッシュは自然水域でも見つかっている
そんなミステリークレイフィッシュですが、日本で見つかったのは今回が初めてではありません。
過去にも国内で発見されており、2006年には天然水域から初となる個体が北海道の札幌市から1個体が発見されました。さらに、2016年には愛媛県の河川からも本種が発見されています。
ミステリークレイフィッシュは生態系に大きく影響を与える可能性も
ミステリークレイフィッシュは単為生殖が可能であることから生態系に大きな影響を与える外来生物として注視されています。
かつて、本種は日本を含む各地のペット業界で流通していましたが、国内では令和2年11月よりアメリカザリガニを除くすべてのザリガニが特定外来生物に指定されました。現在は飼育、販売、運搬、譲渡などが禁止されているので注意しましょう。
また、環境省ではミステリークレイフィッシュを発見した際にはすぐに通報するように呼びかけているほか、外来ザリガニの同定方法を公開しています(外来ザリガニ-環境省)。
(サカナト編集部)