現在、日本の真珠が世界で注目されているのを知っていますか。
実は真珠の養殖を初めて成功させたのは日本。そして、全国で様々な貝を使った美しい真珠が日々生まれています。
真珠はどうやってできるのか?
真珠は鉱石から成る他の宝石と異なり、貝の体内で作られる“自然の宝石”です。
鉱石よりも硬度が低く、傷がつきやすいのが難点ですが、特有の光沢や滑らかな質感が魅力です。あの世界三大美女・クレオパトラも真珠を愛していたと言われています。
真珠は、貝の体内に入った異物と貝殻成分を分泌する外套膜(がいとうまく)が混入することで生成されます。外套膜が異物を覆い、カルシウムの結晶とタンパク質が交互に積み重なることで層が形成されたものが「真珠」になります。
この原理を応用し、人為的に真珠の土台となる球体(核)と外套膜を貝の体内に移植して作られるのが養殖真珠。天然真珠が見つかる確率は1000分の1程度と言われており、現在世界で流通している真珠の多くが養殖ものです。
日本の真珠の品質が高いワケ
日本の真珠は、美しい光沢(「テリ」とも呼ばれる)や真円に近い形など、すべてにおいて品質が高いと言われています。これには日本の地形が影響していると考えられます。
長崎・対馬、愛媛・宇和島、三重・伊勢志摩は日本真珠三大産地といわれており、いずれも山に囲まれて波が穏やかな海を有しています。入り江の豊富な栄養分と、四季による海水の寒暖差によりキメが整った高品質な真珠が生まれるのです。
明治26年(1893)年、今や日本を代表するジュエリーブランド「ミキモト」の創業者である御木本幸吉氏は世界で初めて真珠の養殖に成功しました。御木本氏がそこから10年間の研究を経て作り出した真円真珠の養殖技術は、その後の日本の真珠養殖の発展の礎となりました。
当初、養殖真珠の品質は天然真珠に劣るとヨーロッパから懐疑的な目を向けられましたが、日本人が現地で真珠養殖に伴う精密作業をこなしていることが伝わり、最終的には日本の真珠養殖産業が世界に広く認知されることになりました。
当時からしても、日本の技術力は秀でたものだったことが分かりますね。
世界で注目される日本の真珠
今、世界中で日本の真珠の人気が上がっています。
特に中国では習近平国家主席の妻・彭麗媛夫人や、人気女優・ディリラバさんが身につけたことにより、中国は今空前のパールブームが巻き起こっているといいます。
しかし地球温暖化による海水温上昇が影響し、高品質な真珠が取れにくくなっていることもあり、日本の真珠の価格は10年前に比べ約3倍まで上昇しています。
日本の真珠文化はこれからも進化する
真珠養殖で最も多く使われているのは阿古屋貝(アコヤガイ)ですが、実は他の貝からも真珠が作られています。
黒蝶貝(クロチョウガイ)からとれる黒蝶真珠は、その名の通り美しいブラックカラーが魅力。一方、奄美大島では白蝶貝(シロチョウガイ)を用いた真珠養殖が行われており、「奄美ゴールド」と言われる金色の真珠が国内外で話題になっています。
自然が育んだ奇跡の宝石・真珠。日本の真珠の品質が世界でもトップクラスなのは、なんだか誇らしいですね。
(サカナトライター:桐田えこ)