堤防で釣りをしているといつも釣れる魚や、磯でいつも見る魚たち。
身近な魚というのは、よく観察せずに逃がしてしまうことも少なくありません。しかし、よく見ると面白い特徴を持っていることがあります。
アナハゼは釣りのゲストの定番として知られる肉食魚ですが、実は意外な特徴を持っている魚なのです。
アナハゼとは 「ハゼ」と付くけどカジカと同じグループ
アナハゼはスズキ目カジカ科アナハゼ属に分類される魚またはその総称です。
アナハゼ属の魚たちは標準和名に「ハゼ」と付きますが、実際にはギスカジカやトゲカジカといった所謂カジカと同じグループに属します。
ハゼ科と比較して大きくなることや、ハゼ科では多くの種で腹びれが吸盤状になることから、容易に区別することが可能です。
アナハゼ属の魚たちはカジカ科では比較的に温帯域でみられる種で、特にアナハゼは各地の岩礁や藻場に生息。肉食性で口が大きいため釣りのゲストでは定番の魚です。
硬骨魚では珍しい<交尾をする魚>
アナハゼの大きな特徴してあげられるのが、オスがもつ大きな生殖突起です。メスはこの突起を持ちません。
硬骨魚の生殖というと、メスが産卵した卵子にオスが精子をかけて受精させる体外受精が主流ですが、アナハゼを含むカジカ科の一部は珍しく交尾を行います。
オスはメスの卵巣内に精子を放出し、メスは輸卵管を用いてホヤやカイメンなどに卵を産み付けます。このことから、カジカ類は体内受精を行う魚と考えられていました。
しかし、その後、ニジカジカを用いた研究で、受精が行われているのは産卵後であり、体内受精ではなく体外受精を行うことが判明。このような繁殖様式を体内配偶子会合型と呼び、多くのカジカ科でこの繫殖様式が確認されました。
筋肉が青い魚 毒々しいけど無毒
アナハゼの特徴は大きな生殖突起だけではありません。
アナハゼを食べたことがある人であれば身をもって知っていると思いますが、なんとこの魚は筋肉が青色をしているのです。
なぜ、このような色をしているかと言うと、胆汁色素のビリベルジンによるものだと考えられています。そのため、見た目は毒々しいですが無毒です。
このような特徴を持つのはアナハゼだけではなく、キバアイナメ(Ophiodon elongatus)の筋肉やダツ科の骨でも、同様の発色が知られています。
また、一部のウナギ科やベラ科では血漿中のビリベルジン濃度が高いことが報告されています(Assessing prevalence and correlates of blue‑colored fesh in lingcod (Ophiodon elongatus) across their geographic range)。
身近な魚にも知らないことがある
このように普段の釣りや磯遊びでよく見ている魚でも、知らないことがあるものです。
珍しい魚を観察することはもちろん、時には普通種をじっくり観察するのもいいかもしれませんね。
(サカナト編集部)