釣りのターゲットとしても大人気の魚・クロダイ。
釣具店に立ち寄ると、クロダイ釣りの餌としてコーンが売られています。でもよく考えてみると、「魚がトウモロコシを食べる」ということを疑問に感じる人もいるのではないでしょうか。
なぜクロダイ釣りにコーンが使われるのか──。
柔軟な食性や捕食行動、沿岸環境に存在する多様な餌資源、そして環境への高い適応力から、クロダイのしたたかな生存戦略を読み解いていきます。
クロダイの食性と雑食性の特徴
クロダイは雑食性の魚で、エビやカニなどの甲殻類、ゴカイなどの多毛類や藻類を食べます。
生息域も広く、堤防周辺や岩礁帯、砂地、河口周辺など、海水域から汽水域まで幅広い場所で姿を見ることが可能です。
クロダイ(提供:PhotoAC)こうした環境には多くの生き物が生息し、豊富な餌資源が存在します。雑食性と環境が相まって、クロダイは様々な餌を食べているのです。
視覚で餌を認識する捕食のしくみ
クロダイの網膜には青色、緑色、赤色に加え、紫外線を吸収するたんぱく質が存在することが知られています。
この視覚能力によって、例えば浅場のように光が届く場所で、餌の動き・形・色といった情報が捕食の判断材料になっていると考えられます。
筆者はクロダイ釣りに10年ほど挑戦していますが、とにかくクロダイ釣りは難しいです。隣の釣り人と同じ餌を使っても釣れないときもよくあります。
その理由は、クロダイの大きな目が釣り人の餌をじっと観察し、わずかな違いを見分け、品定めをしているのかもしれません。
こうして視覚能力について考えてみると、コーンのように鮮やかな黄色で形がはっきりしているものは、クロダイにとって興味を引く餌になっている可能性があります。
沿岸環境にみられる多様な餌資源
沿岸には様々な生き物が生息しています。
ヨコエビやモクズガニの幼体などの甲殻類、フジツボやアケミ貝などの貝類、ゴカイやイソメなどの多毛類や小型の魚類など、その種類は豊富です。
クロダイ(提供:PhotoAC)クロダイの口は貝類を砕くことのできる強い歯を持ち、比較的硬い餌でも捕食することが可能です。多くの生き物が存在する沿岸環境は、クロダイにとって絶好の場所となっていると言えます。
クロダイはこうした環境に応じて餌を追い求める、柔軟な食性を持っていると言えるでしょう。
コーンを食べるクロダイの柔軟な生存戦略
クロダイは環境によって食べるものを変える柔軟な魚です。
例えば、養殖場では人間が様々な海産物を育て、飼料を撒いています。その環境下でクロダイは普段は食べないものも捕食するように適応してきたと考えられます。
実際に、牡蠣養殖場周辺でのクロダイ釣りは、牡蠣を餌として利用する釣りが成立しているほどです。
柔軟な捕食行動や適応力こそが、クロダイの海を生き抜くための力になっているのでしょう。
その力が、コーンのような海に存在しない餌に対しても、捕食する背景となっていると考えられます。
(サカナトライター:そい太)
参考文献
海野徹也(2010)、クロダイの生物学とチヌの釣魚学、成山堂書店