北海道教育大学・未来の学び協創研究センターの今村彰生准教授と、龍谷大学先端理工学部の丸山敦教授(生物多様性科学研究センター兼任研究員)の共同研究により、琵琶湖固有の魚食魚である「ハス」が、長期的に減少していることが明らかになりました。
同研究では、13年間にわたる釣り調査と環境データの解析をもとに、個体群の動向を解析したといいます。
ハスは琵琶湖の頂点捕食者。生態系のバランス維持に重要な役割を担っている同種の減少は、湖全体の生態系変化を示すサインとして捉えられます。
この研究結果は、国際学術誌「Aquaculture, Fish and Fisheries」に掲載されています(論文タイトル:Persistent decline of the piscivorous cyprinid, Opsariichthys uncirostris, in Lake Biwa despite recovery trends among other native species)。
琵琶湖の頂点捕食者「ハス」に長期減少傾向
ハス Opsariichthys uncirostris は、琵琶湖・淀川水系の固有種であるコイ科の魚です。その個体群が長期的な減少傾向にあることを示す研究成果が発表されました。
ハスは、日本のコイ科魚類で唯一、他の魚を積極的に追って捕食する魚食魚として知られています。琵琶湖の食物網における頂点捕食者として、餌となる魚の個体数を調整する役割を果たしてきました。
ハス(提供:PhotoAC)しかし、漁獲量は1970年代の年間100~150トンから、近年では6~12トン程度にまで落ち込んでおり、環境省レッドリストでは絶滅危惧II類(VU)に分類されています。
一方で、漁獲量の減少が必ずしも個体数の減少を直接示すとは限らないことから、漁獲量とは別に個体群の動向を評価する必要がありました。
13年間・約110kmの釣り調査が裏付ける減少
研究チームは、2011年から2023年にかけて琵琶湖沿岸で実施されたルアー釣り調査のデータを用いて、ハスの個体群動向を解析したといいます。
約110kmにおよぶ湖岸で行われた調査から、457地点・721件の観察記録を統合し、出現状況を統計的に解析しています。
琵琶湖(提供:PhotoAC)その結果、ハスの検出確率は過去13年間で一貫して低下しており、とくに2017年前後を境に急激な低下が確認。2017年以前には約0.6だった検出確率が、2017年以降には約0.2程度まで落ち込んでいるといいます。
これは滋賀県の漁獲統計が示してきた減少傾向を、別の手法から改めて裏付ける結果となりました。
ハスの個体数だけでなく、同種が砂や礫(れき)からなる湖底を好むことや、特定の湖岸に分布が偏るなど、湖岸環境との関係も明らかになっています。
気候変動と湖岸環境の変化が影響か
本研究では、近年の気候変動とハスの減少との関連についても検討が行われました。
過去13年間、琵琶湖の水温は上昇傾向にあり、25℃や30℃を超える高水温が2016年、2019年、2020年、2021年に頻繁に観測されており、この時期は2017年前後の検出確率の急低下とも重なっています。
琵琶湖(提供:PhotoAC)小魚を追って活発に泳ぐハスは、ほかの魚よりも酸素消費量が多いと考えられています。近年の水温上昇により水中に溶け出した酸素が低下し、影響を与えた可能性が指摘されています。
また、水位が下がることにより、湖と流入河川の接続を弱め、繁殖期に河川へ遡上するハスの移動を妨げている可能性もあるなど、生活史全体を通じて気候変動による大きな影響が懸念されています。
実際に、一部の在来魚では回復傾向が報告される一方で、頂点捕食者であるハスの減少が続いているそうです。
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