水族館で暮らす動物であっても、その行動を個体ごとに長期間観察することは簡単ではありません。そこで活躍するのが小型ロガーを用いた調査「バイオロギング」です。バイオロギングでは、動物に小型のカメラや計測器を装着することで、その生活を明らかにすることができます。
麻布大学獣医学部動物応用科学科の山本誉士准教授、すみだ水族館、名古屋大学による研究グループは、すみだ水族館で暮らしているマゼランペンギンを対象に小型データロガーを用いた調査を行い、個体ごとのプール利用率を明らかにしました。
この研究は「Zoo Biology」に掲載されいます(論文タイトル:Diving Into Diversity: Considering Intra-Specific Variation in Water Immersion Activity of Aquarium-Housed Magellanic Penguins)。
動物の生活をのぞき見
バイオロギング(Bio-logging)は動物の体に計測機器を装着し、長時間記録する手法。対象動物の食性や体温、さらには周囲の環境などを観察することができます。
計測機器の小型化・軽量化によりバイオロギング技術は発展。現在、大型のサメやアザラシ、ペンギンなど様々な動物の研究に導入されています。
バイオロギング技術は野生下の動物だけでなく、飼育下の動物にも用いられています。
マゼランペンギン(提供:PhotoAC)麻布大学獣医学部動物応用科学科の山本誉士准教授、すみだ水族館および名古屋大学による研究グループは、すみだ水族館で飼育されているマゼランペンギンを対象に、小型ロガーを用いた研究を実施しました。
個体ごとに異なる水中で過ごす時間
対象となったマゼランペンギンは23個体で、個体ごとにプールの利用行動を長期間にわたり継続的に記録が行われています。
その結果、全体として主に日中にプールを利用していることが明らかに。1日のうち水中で過ごす時間は平均35.2パーセントであることがかわっています。
一方、水中で過ごす時間には個体差があり、20.4パーセントから70.1パーセントと大きな差があったとのことです。
ペンギンに生じる疾患との関係
鳥類の足裏に生じる疾患として、趾瘤症(しりゅうしょう)があり、飼育下のペンギンにおいてもこの疾患は課題の1つだといいます。
研究では、水中にいる時間と趾瘤症との関係についても検討。その結果、日常的に水中で過ごす時間が長い個体ほど、趾瘤症と診断された回数が少ない傾向が認められています。
ペンギンの水中利用を継続的に把握することが、より良い飼育管理を検討するのに役立つことが期待されています。
1羽1羽に目を向けた健康状態の把握
小型ロガーを用いた研究によって、群れを形成するペンギンを個体ごとに長期間記録することに成功し、個体ごとに水中で過ごす時間が異なることが明らかになりました。
また、記録からは水中で過ごす時間と趾瘤症の関連性が示唆されています。
この成果は、同じ環境で暮らすペンギンでも水中利用時間には個体差があることを示しており、飼育動物の健康状態の把握には1羽1羽にの行動特性に目を向けることが重要であるとしています。
(サカナト編集部)