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天然記念物にして絶滅危惧種の日本固有種<アユモドキ> 希少な淡水魚保全の裏側とは?

日本のごく限られた地域に生息しているアユモドキという淡水魚がいます。

アユモドキは日本固有種で、国の天然記念物にも指定されています。そして、環境省や国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧ⅠA類 (CR)に指定されている、とても希少な魚です。

今回、生息地の一つである岡山市で行われた“アユモドキの保全活動”に参加しました。アユモドキや、アユモドキが生息する環境に関心を持ってもらえるよう活動内容をレポートします。

ドジョウに似た日本固有種「アユモドキ」

アユモドキ(学名:Parabotia curtus)は全長15〜20cmほどの魚です。諸説あるものの、泳ぐ姿や成魚の見た目がアユに似ていることからその名が付けられたと言われています。実際、4歳くらいから縞模様が薄くなりアユに似てきます。

まるでアユとドジョウが合体したような姿をしていますが、分類はコイ目ドジョウ亜目アユモドキ科に属する魚です。

サケ目アユ科のアユ(学名:Plecoglossus altivelis altivelis)とは全く別の種で、まさに“他人の空似”という言葉がぴったりです。

アユモドキとドジョウ(提供:PhotoAC)

アユモドキの幼魚は主にプランクトンを食べ、成長するとイトミミズや水生昆虫などを捕食。なお、アユは成長段階では動物性のえさを好みますが、成魚は主にコケを食べ、アユモドキとは食性も異なります。

幼魚には明瞭な黒褐色の幅広い横帯が7〜11本ありますが、成長すると不明瞭になります。

アユモドキはドジョウに特有の立派なひげを有し、上あごに2対、下あごに1対のひげがあります。ちなみにドジョウの種類により本数は異なります。

幼魚も“ひげ面”なんて、なんだか面白く感じるのは筆者だけでしょうか。

アユモドキ幼魚(撮影:額田善之)

筆者がたまたま捕獲した唯一の成魚を見ると、確かに縞模様が薄くぼやけた感じになっていました。これを見ると、アユに似ているというのも少し頷けます。

アユモドキ成魚(撮影:額田善之)

筆者は天然もののアユモドキの成魚を初めて見たので、感激しました。

2004年には、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)により、アユモドキは国内希少野生動植物種に指定。捕獲や殺傷、譲渡、販売、輸出入などが禁止となり違反すると罪に問われるので、絶対に捕獲などしないようにしましょう。

違反した場合、個人では5年以下の懲役または500万円以下の罰金、法人では1億円以下の罰金が科されます。もし、違法な行為を見かけたら環境省まで連絡してください。

アユモドキは水路や水田にすんでいる

アユモドキは河川の支流や農業用水路、それらにつながる水田などに生息しています。

また、昭和中期ごろまでは河川の氾濫によってあふれた水が氾濫原(はんらんげん)にたまり後背湿地(こうはいしっち)を形成し、アユモドキの恰好の繁殖場になっていたそうです。

用水路へ水中ポンプを設置(撮影:額田善之)

氾濫原は氾濫によって生じる大きな水たまりのような場所で、後背湿地はその水が抜けずに湿地帯を形成している場所のことを指します。

しかし、現在はそのような場所も減り、岡山県の旭川水系と吉井川水系、京都府の桂川水系の限られた場所にしか生息していないそうです。これはとても悲しいことですね。

アユモドキが激減した理由は?

アユモドキが絶滅危惧種になったのは、生息場所と産卵場所の減少が最大の原因だと考えられています。

昭和中期頃までは日本では稲作が盛んで、用水路もコンクリート化していませんでした。そのため、用水路は石垣と土でできており、水草が生い茂り、魚の隠れる場所もたくさんありました。

また、河川の氾濫もたびたび発生し、栄養豊富な土砂を含んだ濁流が水田や水田周りの氾濫原に入り込むことで、水生生物や魚の恰好の繁殖場所となっていたのです。

コンクリート化された用水路(提供:PhotoAC)

しかし、河川のコンクリート化や計画放水などの施策により、水田への水やアユモドキの流入がなくなり、魚の住める場所や産卵場所も激減したため、繁殖力の弱いアユモドキは減少の一途をたどりました。

その他、農薬の影響や外来魚による捕食、違法捕獲なども、アユモドキが減少した原因だと言われています。

アユモドキの保全活動

アユモドキが生息する岡山県においても、1970年代頃にはすでにアユモドキの数は激減。これを心配した人々が天然記念物指定のために奔走しつつ、アユモドキの保全活動を始めたそうです。

自分たちでできることから始めようと、まずはアユモドキが生息する河川の掃除を実施して綺麗な環境を作り上げました。その後、休耕田を借り上げてアユモドキの繁殖場を設け、本格的な保全活動がスタートしたといいます。

強い熱意で保全活動が行われていることに感動し、先人たちの頑張りに感謝したい気持ちでいっぱいです。

休耕田の整備(撮影:額田善之)

また、毎年の田植え前には用水路から繁殖場へ水を流入させるための水中ポンプを設置し、繁殖場の水が少なくなった際に水を供給できるシステムを導入。同時に、繁殖場内の水路掃除や補修なども実施し、アユモドキが繁殖しやすいように整備も行います。

筆者が参加した6月初旬の整備活動は、雨天の中で行われました。活動が環境保全の一助になるのであればとても嬉しく、今年も無事にアユモドキが繁殖することを願っています。

稲作では、田植えから30〜40日後に「中干し(なかぼし)」を行います。その際、繁殖場となっている休耕田に残ったアユモドキを救出し、川へ戻す活動も行われています。

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額田善之

額田善之

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愛媛大学理学部生物学科卒で岡山淡水魚研究会所属の魚大好きライターです。オートバイで旅をして産地の珍しい魚を食べるのが趣味で、子どもと水族館巡りや釣りをして楽しんでいます。水生生物だけでなく、旅行や納豆の記事も執筆しております。よろしくお願いいたします。

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