サケは日本の食卓に欠かせない魚の1つです。しかし近年、その漁獲量は減少傾向にあります。
不漁の原因としては、海へ降りた稚魚の多くが海洋環境の変化などにより生き残れず、川に回帰する数が減っていることが指摘されてきました。しかし、実際のところ外洋まで回遊するサケが、いつどこでどのくらい減るのかは謎に包まれていたのです。
そうした中で、水産研究・教育機構水産資源研究所さけますセンターは2007年から15年にわたり、ベーリング海においてさけます資源生態調査を実施。日本で生まれたサケがベーリング海で多い場合、日本に回帰するサケの数も多いことを明らかにしました。
この研究成果は『Fisheries Research』に掲載されています(論文タイトル:Decadal changes in body size and stock-specific abundance of chum salmon in the central Bering Sealinked with adult returns)。
日本の川で生まれ、回帰するサケ
サケは川で生まれ稚魚が海へ降り、初めの夏を日本のさらに北、オホーツク海で過ごすとされています。
冬期には北太平洋西部に移動して越冬後、サケたちはベーリング海へと移動します。夏のベーリング海は餌が豊富であることから、この海域はサケの重要な成育場と考えれています。
サケ(提供:PhotoAC)ベーリング海で成長したサケは、アラスカ湾とベーリング海を行き来し、生後3~5年で生まれた川へと帰っていきます。
サケが減っている原因は?
そんなサケですが、近年、国内の漁獲量が減少しています。
不漁の原因は、海へ降りたサケの稚魚が海洋環境の変化によって生き残れず、日本の川へ回帰するサケが減ったことにあると考えれてきました。
一方で、外洋を回遊サケが実際にどこでどのくらい減っているのか、詳しいことはわかっていなかったのです。
ベーリング海を15年にわたり調査
そうした中で、水産研究・教育機構水産資源研究所さけますセンターは、外洋におけるサケの生態を解明すべく、 2007年から15年にわたり、毎年7~8月にベーリング海で資源生態調査を実施しました。
ベーリング海のさけます調査はこれまでにアメリカやロシアも実施。しかし、いずれも自国沿岸に限られています。
今回の調査は公海を含むベーリング海の中央部も対象となっていることが特徴です。
各地からサケが集まる海域
餌が豊富な夏のベーリング海。
この海域には北太平洋西部から移動してきた海洋年齢1歳のサケ、アラスカ湾から来た2歳以上のサケたちが集まります。
DNA分析の結果では、調査で得られたサケのうち約70パーセントがロシア、20パーセントが日本、10パーセントが北米、1パーセント未満が韓国生まれであることが明らかになっています。
ベーリング海でサケが多いと回帰する数も多い
この結果に表層トロールで得られたサケの数を掛け合わせ、日本生まれのサケの数の算出も行われました。
その結果、ベーリング海に日本生まれの海洋年齢1歳のサケが多いほど、回帰する数も多いことが判明。また、2012年以降に生まれたサケは1歳の時点で少なく、2歳以上でも少ないままだったといいます。
サケ(提供:PhotoAC)こうしたことから、サケが日本を出発し北太平洋西部で越冬を終えるまでに生き残るサケが近年、少なくなっていることがわかったのです。
これまで、オホーツク海に到達するまでに生き残った数により回帰尾数が決まるとされてましたが、ベーリング海に到達するまでの生き残りも重要である可能性を示しています。
各国のサケが餌をめぐり争う?
さらに15年間で変化していたのはサケの数だけでありませんでした。
なんとベーリング海でサケが多く獲れた年ほど、サケが小さくなっていることが分かったのです。これはベーリング海に多くの個体が生息することで、餌の競争が激化し1尾あたりの取り分が少なくなった結果と考えられています。
このような密度依存の成長は海洋年齢1歳の時に見られず、2歳時に見られることから、ベーリング海に到達するまで、あるいは到達した直後に起きていると考えれれています。
アメリカやロシア生まれのサケもベーリング海を利用していることから、各国のサケ同士が餌場で争っている可能性が示唆されたのです。
サケ資源の早期予測に貢献
今回の研究によって、日本生まれのサケがベーリング海に多ければ、日本に回帰するサケの数も多くなることが明らかになりました。
また、サケの数が多いと餌場で競争が起き、体のサイズが小さくなることが示唆されています。
この成果は、将来のサケ資源の早期予測や外洋環境がサケに与える影響を数値するための基盤になるとされています。
(サカナト編集部)