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海水魚採集家の憧れ?<サザナミヤッコ> 季節来遊魚の採集&飼育方法と仲間たち

サザナミヤッコ」という魚を知っていますか。

マリンアクアリストや採集家の間ではよく知られた存在で、水族館でもよく展示されているため、目にしたことがある方も多いかもしれません。

この魚の特徴は、なんといっても成魚と幼魚で模様がまったく異なること。その特徴は、魚がもつ奥深さや生きものの不思議を我々に伝えてくれているようにも思えます。

また、サザナミヤッコは温かい季節になると北の海へと分布を広げ、寒くなると繁殖できずに死んでしまう「死滅回遊魚(無効分散、季節来遊魚)」としても知られています。そんなサザナミヤッコを「採集」と「飼育」という視点から掘り下げてみました。

波のような模様が和名の由来<サザナミヤッコ>

サザナミヤッコはスズキ目キンチャクダイ科の仲間で、日本の太平洋から琉球列島に生息しています。主に岩礁域や珊瑚礁域で見られ、キンチャクダイ科の中では大型になる種です。

ダークブルーの体色に青く縁取られ、白と青のラインがまばらに引かれており、波のような模様が本種の和名の由来だとか。

サザナミヤッコ(提供:たつ)

サザナミヤッコの仲間は幼魚と成魚の体色に違いがあることが特徴で、その秘密は縄張り意識が高いので争いの際、親と子で色が違うことで仲間から識別されやすくするためといわれています。

海綿や藻類を食べる雑食性で餌付けがしやすく、飼育も比較的容易です。季節来遊魚として千葉や伊豆など日本近海で幼魚を見ることができ、磯採集の花形として何十年も君臨し続けています。

海水魚ショップではフィリピンやインドネシアからコンスタントに輸入され、価格も安く手に入りやすい魚といえるでしょう。

サザナミヤッコの採集の仕方

サザナミヤッコは、採集魚としてチョウチョウウオに次いで人気が高い魚といっても過言ではありません。

また、チョウチョウウオやニザダイの仲間と比べ見つけにくいことに加え、色がない岩場で見つかることから青と白の体色はとても目立つのです。青と白の独特な模様は採集家の心を揺さぶり、出会った瞬間は心躍ります。

狙い目のサイズは飼育しやすい3~5センチ。採集の仕方としてまず時期と場所の選択が大事です。採集できる水深は1~5メートルと幅広く、運が良ければ潜水しなくても浅瀬で見つけることも可能でしょう。

サザナミヤッコ(提供:たつ)

海の中で見られる地形はやや沖の大きな岩の割れ目や穴の中なので、覗き込むように探すことが必要です。また、ただの岩場ではなくサンゴやガンガゼがたくさんいる岩場の窪みにもいたりするので、ポイントを絞るときに意識してみてください。

サザナミヤッコの幼魚(2~3センチ)は泳ぎは早くないので、見つけたら穴の出口に網を設置し、手や追い出し棒で誘導してあげると採集できます。

4~10センチの個体は隠れるだけでなく、少し早く泳ぐため、採集しやすい場所まで追い込み、的確に網に誘導するのがコツ。水深や場所によっては運が必要になってきますので、諦めずに頑張って採集できるチャンスを切り開きましょう。

サザナミヤッコの飼育の仕方

サザナミヤッコの飼育は、海水魚の中では中級者向けの難易度です。

水槽環境に慣れた個体は人工飼料(ドライフード)を簡単に食べてくれます。飼育しやすいサイズは3~5センチ。Sサイズのドライフードを食べてくれる飼育しやすい大きさです。

水槽の濾過がしっかりしており、余裕あるスペースがあれば長期飼育を狙えます。サザナミヤッコは大型ヤッコの仲間で最大40センチほどに成長しますので将来的に90センチ以上の水槽が必要になってくることに注意しましょう。

サザナミヤッコの幼魚(提供:たつ)

遊泳スペースを確保することは長期飼育するために必須の項目なので、ぜひ押さえておきたいところ。混泳に関してですが、科が違えば問題ないものの、キンチャクダイの仲間とは喧嘩をするため注意が必要です。

そのため、ひとつの水槽にサザナミヤッコ1匹が原則となってきます。痩せやすく、簡単に体色が悪くなってきてしまうので、エサは1日2~3回与えることが大事です。

エサの種類は偏りがなく、動物性、植物性、冷凍エサ、生きエサを混ぜながら与えると元気に成長させることができます。長期飼育できれば、幼魚のカラーから成魚のカラーに変化する過程を楽しむことができます。

サザナミヤッコの仲間の紹介

サザナミヤッコの仲間は日本には本種を含めて5種、世界にも何種類か生息しています。

採集できる種は限られてきますが、アクアリウムショップでは様々な種が入荷してきます。共通する特徴としては成魚と幼魚で大きく体模様が異なることです。

タテジマキンチャクダイ(幼魚)

タテジマキンチャクダイの幼魚(提供:たつ)

通称「ウズマキ」と呼ばれているサザナミヤッコと並んで人気の大型ヤッコです。ショップでも1万円以下で販売され、コンスタントに入荷しますので入手は簡単です。

季節来遊魚として採集も可能ですが珍しい種になります。大型ヤッコのなかではデリケートで皮膚が荒れやすいのでエサはさまざまなものを与えましょう。上手に飼育すると1、2年で成魚となります。

アデヤッコ(半成魚)

アデヤッコの半成魚(提供:たつ)

アデヤッコは通称「ブルーフェイス」と呼ばれる大型ヤッコ。

自然界では大型にはなりますが飼育環境だとそこまで大きくならない印象です。力強く丈夫なのでスペースさえ確保できれば長期飼育を狙えます。

イエローバンドエンゼルフィッシュ(半成魚)

イエローバンドエンゼルフィッシュの半成魚(提供:たつ)

通称「マクロスス」と呼ばれている海外の大型ヤッコです。専門的なショップでは見ることができます。

サザナミヤッコにそっくりな体に黄色いバンドが入るカッコいい種です。最近では幼魚1万円、成魚3万円~が相場となってきます。大きな水槽で飼育すると成長は早く、1年で3センチから10センチほどまで成長します。

季節来遊魚として見ることが最大の魅力

サザナミヤッコは、成魚と幼魚で体色が違う特徴と独特な模様が人々を魅了してきました。

アクアリウム業界でも定番となる人気種ですが、筆者からすると日本の磯で季節来遊魚として見ることができることがいちばんの魅力だと感じます。

昔から採集家の中では「サザナミヤッコが取れた時はお赤飯を炊く」と言われているのですが、チョウチョウウオやスズメダイ、ニザダイの仲間にはない、独特なオーラを放っていることがこの理由かもしれません。言葉に出来ないほど惹きつけられる何かがあります。

毎年、サザナミヤッコを磯で見ることで興奮できるのは、大自然に感謝する瞬間ともいえます。これから先何年も変わらずサザナミヤッコに出会えることを祈っています。

(サカナトライター:たつ)

参考文献

瀬能ひろし(2008)、山渓ハンディ図鑑13 日本の海水魚、山と渓谷社、P234

中坊徹次(2018)、小学館の図鑑Z 日本魚類館、小学館、P306

海の魚とサンゴの情報誌マリンアクアリスト no.103 2022 SUMMER、エムピージェー、P10、P20

富沢直人(2008)、ヤッコ&チョウチョウウオの世界、ピーシーズ、P20-23

  • この記事の執筆者
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たつ

たつ

伊豆と僕と時々奥さん

綺麗な魚に魅せられて10年。 飼育・採集を自由気ままに続けるアクアリスト。 私と出会った魅力溢れる魚達や海水魚の飼育方法を紹介します。 誰でも手軽に読めて知識の輪を広げれたらいいなと思います。

  1. 海水魚採集家の憧れ?<サザナミヤッコ> 季節来遊魚の採集&飼育方法と仲間たち

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