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“食性”も“体温”も分かる? 最近の<バイオロギング調査>で判明した水生生物たちの生態

人間の目で生物を長時間観察・記録することは困難です。特に水中に生息する生物の観察は極めて難しく、身近な種であっても生態が十分に理解されていない、なんてことも珍しくありません。

しかし、近年は装置の小型化・軽量化に起因したバイオロギング技術の発展により、多くの水生生物の生態が明らかになりつつあります。

【画像】最新のサメ研究でも利用されるバイオロギング

バイオロギングとは

バイオロギング(Bio-logging)とは動物(Bio)にカメラやロガー(Logar:記録計)を装着することで、その生態を記録しデータ化するというものです。

この手法では、対象動物の食性や移動経路、周辺の水温といった環境までも記録することができ、海洋生物など人間の目では長期的な観察・記録が難しい生物種で活躍しています。

これまで、機器の小型化・軽量化・量産化・高性能化にともないバイオロギングは大きく発展してきました。機器が小型・軽量になるということは動物の行動を阻害しないという大きな意義があります。

対象となる生物は、ペンギンやアザラシ、大型のサメから大衆魚のマアジまで多種多様であり、例えばバイカルアザラシを対象にしたバイオロギングでは意外な食性が明らかになっています。

バイカルアザラシはヨコエビを1匹ずつ捕食する

バイカル湖に生息するバイカルアザラシ。従来、この生物は主に魚を食べると考えられていました。

しかし、2020年に「Proceedings of the National Academy of Sciences」で発表された論文(Ultrahigh foraging rates of Baikal seals make tiny endemic amphipods profitable in Lake Baikal)では、ヨコエビを積極的に食べていることが明らかになっています。

バイカルアザラシ(提供:PhotoAC)

ヨコエビは小さな甲殻類であり、1匹あたりの重量はわずか0.1グラム程。ヨコエビの1種がアザラシの胃の中から見つかることがあるものの、このような生物を餌として利用するのは非効率と考えられていました。

この研究ではバイカルアザラシにカメラと記録計を装着し捕食行動を調査。なんとバイカルアザラシが夜間に積極的に潜水し、ヨコエビを1匹ずつ連続して捕食している様子を捉えています。

バイカルアザラシは1回の潜水で平均57匹のヨコエビを捕食し、1日の平均は4300匹にもなると推定されました。

この研究ではバイカルアザラシの知られざる食性をバイオロギングによって明らかにしたのです。

アオザメが持つ脅威の体温調整能力

バイオロギングのすごいところは対象の体温の変化までわかってしまうことです。

2025年8月に「Journal of Animal Ecology」で発表された論文(Enhanced thermoregulation abilities of shortfin mako sharks as the key adaptive significance of regional endothermy in fishes)では、台湾南部沖のアオザメを対象にバイオロギング調査を実施。

アオザメの体温上昇が体温低下よりも10倍以上も速く進行していること、水温の低い深海で体温が奪われるのを防ぐ一方、水温の高い海面では熱を吸収していることを明らかにしました。

これらの体温調整能力により、アオザメは餌が豊富にある深海での捕食を有利にしていると考えられています。

身近な動物でもバイオロギング

バイオロギングは身近な生物を対象にも行われています。

マアジそんな生物の1つ。本種のような大衆魚であっても長時間、行動を観察・記録することは非常に難しく、十分に理解されていない生態も少なくありません。

そのため、生態を解明すべく電子タグを用いたバイオロギング調査が行われています。

生息水深を変える東京湾のマアジ

2026年2月に「Fisheries Oceanography」で発表された論文(Vertical Habitat Use by Japanese Jack Mackerel Trachurus japonicus Inferred From a Biologging Study in Tokyo Bay)では、東京湾に住むマアジを対象に電子タグを用いた調査が行われました。

マアジ(提供:PhotoAC)

この調査では、東京湾のマアジが昼夜で過ごす水深が異なることが判明。なんと、マアジは昼間に深く夜に浅い場所で過ごしていたのです。

また、季節による生息水深の変化も見出されており、冬になると深い湾口部へと移動したとされています。なお、対象の中で最も大きい個体は水深300メートルまで移動していたとのこと。

このことから大きさと冬場に過ごす水深になにか関係があると考えられています。

バイオロギングで解き明かされる動物の生態

バイオロギングでは、人の目では長時間観察・記録することが難しい水生生物の謎を、ロガーから解き明かすことができる画期的な手法です。

この手法は、水生生物はもちろんのこと、陸上生物から鳥類にまで用いられています。今後もバイオロギングで様々な動物の未知なる生態が明らかにされていくでしょう。

(サカナト編集部)

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