あなたが住んでいる街には、身近な生き物について学び、観察できる環境はありますか?
岡山県赤磐市には、身近な生き物を観察することができる「CAFEいきもの舎」という施設があります。
「CAFEいきもの舎」で飼育・展示されている川辺に生息する生き物を見ながら、身近な環境を知ることについて考えてみました。
生き物好き夫婦が営む「CAFEいきもの舎」
CAFEいきもの舎があるのは、岡山駅から車で30分ほどの場所。岡山駅から最寄りのバス停まで行き、そこから徒歩で行くこともできます。
同店は、長年にわたり東京の動物園で働いていた、大の“生き物好き”である細田夫妻が二人で切り盛りするカフェ。「地域の身近な生き物を知り、くつろいでもらえるカフェをやりたい」という夢を叶えるため見つけたのが、赤磐市にある古民家でした。
水槽や生き物関連の本がある店内(撮影:額田善之/撮影場所:CAFEいきもの舎)オープンから7年、身近な生き物たちを知ることができる“癒しの場”として、地域住民に愛されています。
早速<カワアナゴ>と出会う
店内に入ると、早速なかなか出会う機会のない淡水魚、カワアナゴ(学名:Eleotris oxycephala)が目に入ります。
カワアナゴ(撮影:額田善之/撮影場所:CAFEいきもの舎)カワアナゴはスズキ目カワアナゴ科の両側回遊性淡水魚。両側回遊性淡水魚とは、河川で産卵し、海へ下り浮遊生活を送った後に河川へ戻って成長する魚のことです。
福島県以南および新潟県以西の本州、四国、九州、屋久島、種子島に分布する夜行性の肉食魚で、河川の汽水域から下流域に生息。漢字では「川穴子」と書きますが、アナゴの仲間ではなくハゼに近い魚です。
諸説ありますが、頭部を上から見るとアナゴに似ていること、写真のように細長い場所を好むことなどが名前の由来だそうです。
絶滅が危惧される魚
全国的に絶滅が危惧されている魚で、神奈川県では絶滅危惧IB類(EN)、三重県や山口県では絶滅危惧II類(VU)、岡山県や香川県などでは準絶滅危惧種に指定されています。
岡山県でも希少なカワアナゴを見られるのはとても喜ばしいことです。
細い寝床へぎゅうぎゅうに収まる姿が、「まるでちくわキュウリのようでとてもかわいい」と感じてしまうのは筆者だけではないはず──。
身近な淡水魚&小さな生き物も観察可能
メインの水槽では赤磐市の身近な川魚が展示されています。
オイカワ(学名:Zacco platypus)やヌマムツ(学名:Nipponocypris sieboldii)、カマツカ(学名:Pseudogobio esocinus)などの岡山県を代表するような魚です。
ヌマムツやカマツカなど(撮影:額田善之/撮影場所:CAFEいきもの舎)このうち、ヌマムツのオスは婚姻色が綺麗で、目を引きます。ヌマムツはコイ目コイ科の魚で、近縁種にカワムツ、オイカワ、ハス(学名:Opsariichthys uncirostris)などがいます。
ヌマムツとカワムツは非常によく似ていて、以前は同種とされていましたが、2003年に別種となったそうです。カワムツA型とされていたヌマムツは、側線の鱗数、尻ビレの分枝軟条数、胸ビレや腹ビレの色、生息環境の違いによって新種となりました。
なお、有名なドイツ人医師シーボルトがヨーロッパでカワムツを初めて紹介したことから、ヌマムツの学名にはシーボルトの名前が入ったそうです。シーボルトは生物学者でもあり、日本からコイやアユモドキ、カワヒガイなどの様々な魚を持ち帰っています。
観察できる生き物は魚以外にも
その他の生き物として、プラナリア(学名: Tricladida)の仲間やヒドラ(学名:Hydridae)の仲間、ミジンコの仲間(学名:Daphnia)なども展示されており、拡大鏡で観察できます。
ヒドラの観察(撮影:額田善之/撮影場所:CAFEいきもの舎なかなか小さな生き物を野外で観察するのは難しいので、室内で拡大鏡を使ってじっくり観察できるのは子どもの教育にも役立つでしょう。
実際、筆者の子どもも楽しそうに画面を覗いていました。
カフェを楽しみながら身近な生き物を知ろう
CAFEいきもの舎では、コーヒーやケーキなどの軽食を提供しています。
庭の自然や店内の生き物たちを愛でながらおいしい自家製のドリンクやスイーツを食べると、心が癒されます。
ブレンドコーヒーとチーズケーキ(撮影:額田善之/撮影場所:CAFEいきもの舎)また、CAFEいきもの舎の本棚にはたくさんの生物関連の本や雑誌があり、好きなだけ読めます。
知っているようであまり知らない身近な生き物を知り、本や雑誌を読んでさらに理解を深めるのは素晴らしいことですね。
生物関連の本がたくさん(撮影:額田善之/撮影場所:CAFEいきもの舎)自然を守る第一歩は知ることから
近年、河川工事などによる生息環境の変化によるオイカワとカワムツの交雑種や、人為的な移植によるタナゴ類の交雑種などが確認されており、種の維持・保存に危険信号が灯っています。
目で見て、本で理解を深めるなどして自然保護や生物多様性を守ることの大切さを学べば、未来はきっとよりよいものとなるでしょう。
細田夫妻の「カフェを利用せず、ただ生き物や本を見に来るだけの利用も大歓迎」というスタンスも、多くの人にとってありがたいでしょう。
旅行やドライブの合間に一息つける素敵なオアシス。ぜひ訪れてみてくださいね。
(サカナトライター:額田善之)
参考文献
福井県におけるオイカワ属魚類の分布と雑種の記録-福井市自然史博物館
岡山県内におけるスイゲンゼニタナゴの危機的状況について-岡山県
細谷和海(2020)、シーボルトが見た日本の水辺の原風景、東海大学出版部