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<ハイブリッド魚の課題>自然界に存在しない魚に求められる管理とは

昨今話題になっているハイブリッド魚。私たちの食卓を支えるために開発された魚で、回転寿司店などでも扱われるようになってきました。

しかし、ハイブリッド魚は自然界には存在しない魚。自然界に流出してしまうとさまざまな問題が発生してしまうため、厳重な扱いが求められます。

この記事では、ハイブリッド魚の課題・懸念点について解説します。

ハイブリッド魚とは?

ハイブリッド魚とは、2種の魚をかけ合わせて作り出された交雑魚で、養殖しやすく、美味しくなるように開発されています。

大学や食品メーカーなどによる研究が進み、今ではスーパーに陳列されたり、回転寿司屋の寿司ネタとなったりと、目にする機会も増えてきました。

鹿児島湾(錦江湾)での目撃が話題に

ハイブリッド魚は自然界に存在しないはずの魚です。しかし2023年、このハイブリッド魚が自然界で目撃される事案がニュースで報道されました。その場所は鹿児島湾(錦江湾)です。

鹿児島湾(提供:PhotoAC)

高級魚であるクエと、世界最大級のハタと言われるタマカイのそれぞれの特徴を持つ交雑魚が釣れるようになったといい、釣り人の間ではこの交雑魚が話題になりました(いないはずの人工交雑魚「クエタマ」が鹿児島湾で相次ぎ目撃 養殖場から逃げた? 生態系への影響危惧-南日本新聞)。

一般的に、人工交雑魚が自然環境課で繁殖する可能性は低いとされており、また、交雑魚同士の子ができた例はないとの説明もありますが、問題はそれだけではありません。

この交雑魚は一般的な魚より大きく、成長も早いです。さらに、食べる餌の量が多いため、餌の競合や資源の食べすぎにより生態系のバランスが崩れてしまうことも考えられます。

タマカイ(提供:PhotoAC)

タマカイとクエのハイブリット種を養殖している近畿大学は同湾では養殖を行っていないものの、これを受け網を二重にするなどの対策をとったそうです(人工の「怪魚」が釣り人に話題 いけすから逃げた?鹿児島の錦江湾-朝日新聞DIGITAL)。

養殖・放流の課題 消費者が知るべきことは

養殖生け簀から魚が逃げ出してしまうことは、交雑魚に限った問題ではありません。

既に同じ種が生息している魚の養殖や放流では、繁殖がすすみ遺伝的な特徴が失われる(人工の「怪魚」が釣り人に話題 いけすから逃げた?鹿児島の錦江湾-朝日新聞DIGITAL)との指摘もされています。

私たち消費者がより安定的に、より美味しい魚を食べられるように進められてきた養殖漁業。自然環境への影響という観点はこれまで後回しにされてきたとも言えるかもしれません。

養殖場(提供:PhotoAC)

近年、陸上で養殖を行う陸上養殖の技術も研究が進んでいます。陸上養殖にも、設備のコストが大きくかかってしまうことや、魚病等が持ち込まれた場合のリスク及び対策、停電・震災時の被害などのデメリットはありますが、環境負荷という面で考えると海面養殖より優れた面もあるといいます(ただし、いずれもメリット・デメリットがあり、一概にどちらが優れているとは言えません)。

私たち消費者は自らが食べる魚たちがどのようにして生産されたのか、その背景をもっと知るべきなのかもしれません。

(サカナト編集部)

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サカナト編集部

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