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飼育魚を放流してはいけない

飼育魚を放流すると問題が発生することは従来からよく知られています。有名なのは大型の肉食魚による在来生物への捕食圧ですが、カクレクマノミはおもに動物性プランクトンや、小さな甲殻類を捕食しています。

「だったら影響ないではないか」なんてお思いの方もいるかもしれませんが、もし飼育していたカクレクマノミに寄生虫がついていたり、病気に感染していたらその寄生虫やら病気やらが北海道の海に蔓延する可能性もあります。

飼育魚には目にみえない病気や寄生虫がついていることも(撮影:椎名まさと)

アユの冷水病やコイヘルペスなどの大発生例もあるなど、一度でも飼育した魚の野外への放流や逸脱はしてはいけないことなのです。

SNS時代の「映え」とその警鐘

昨今はYouTube、インスタグラム、TikTok、Twitter(Xと改名)などさまざまなSNSが小学生~若者の間にあふれています。

従来型のウェブサイトでは多くの場合「見るだけ」でしたが、現在のインターネット社会では「参加する」ことが一般的になり、SNS参加に必要なカメラ付きのスマートフォンも、小学生から高齢の方まで、多くの人が手にしているはずです。

現在では、SNSでお小遣い稼ぎをするような人もいますが、SNSで注目を集めるのは非常に難しいものです。YouTubeであればチャンネルの閲覧数や登録者数、「X」と改名されたTwitterであれば投稿のインプレッションなどが収益化の条件となり、それを満たすために問題行為を起こすというのはよく話題に挙がります。

生物関係の投稿者においてもそれは例外ではなく、昆虫などに虐待に近い行為を行い炎上する人、採集した地域にいない生物を放ち、それを自ら採集して見せる人、生物を乱獲しその成果をSNSにアップする人などさまざまな問題行為が指摘されています。

このような問題行為が発生すると、YouTubeであればチャンネルの収益化停止、そのほかのSNSであればアカウント凍結などの処罰がありますが、環境関係の行政により採集の規制などが行われることもあります。そうなってしまうと、悲しむ人が多く出ることになります

今回石狩湾に出現したカクレクマノミは、誰がどのような目的で石狩湾に放ったのかは定かではありません。しかしながら、この放流もSNSにおいて注目を集めようとした可能性は否定できません。

いずれにせよ生物を野に放つような問題行動は慎むべきです。

(サカナトライター:椎名まさと)

参考文献

尼岡邦夫・仲谷一宏・矢部 衞(2020)、北海道の魚類 全種図鑑、北海道新聞社

根来晃佑・宗原弘幸(2024)、記録的猛暑の 2023 年に北海道函館市臼尻からSCUBA潜水によって採集された北限記録 13 種を含む初記録 14 種の魚類、 Ichthy, Natural History of Fishes of Japan, 44: 1–25.

園山貴之・荻元啓介・掘 成夫・内田喜隆・河野光久(2020)、証拠標本および画像に基づく山口県日本海産魚類目録、鹿児島大学総合研究博物館研究報告 No.11.

猛暑で異変?北海道の海に“ニモ” 映画さながらの大冒険 クマノミ出現の謎を調査-FNNプライムオンライン

串本海中公園センターFacebook 

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椎名まさと

魚類の採集も飼育も食することも大好きな30代。関東地方に居住していますが過去様々な場所に居住。特に好きな魚はウツボ科、カエルウオ族、ハゼ科、スズメダイ科、テンジクダイ科、ナマズ類。研究テーマは魚類耳石と底曳網漁業。

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