水産資源研究所浮魚資源部の木下順二氏らは、長期の産卵調査により、日本の太平洋側におけるマイワシとカタクチイワシの産卵場が、近年の海洋環境変化に伴って大きく組み替わってきたことを明らかにしました。
本研究は、イワシ類の豊漁と不漁が入れ替わる「魚種交替」の仕組み解明に向けた新たな手がかりとなりそうです。
この研究成果は「Marine Ecology Progress Series」に掲載されています(論文タイトル:Revisiting the spawning overlap of sardines and anchovies in the Kuroshio Current system from 1978 to 2020)。
豊漁と不漁が入れ替わる<マイワシ>と<カタクチイワシ>
日本の食卓に欠かせないマイワシとカタクチイワシ。
太平洋側の海で数十年単位の周期で豊漁と不漁を繰り返し、その主役が入れ替わる「魚種交替」が起きることが知られています。
しかし、なぜ一方が増えるともう一方が減るのか、その仕組みは十分には解明されていませんでした。
イワシ漁(提供:PhotoAC)これまでの研究により、両種の産卵量や産卵場の分布は、季節や資源量の変化に応じて移動することが報告されています。
一方で2000年代中盤以降、海洋環境や資源量が大きく変化する中で、産卵量や産卵場分布がどのように変わったのかは不明な点が残されていました。
そこで研究グループは、日本の太平洋側で1978年から継続されてきた産卵調査に着目。40年以上にわたるデータを用いて、両種の産卵場の変化をとくに2000年代中盤以降に注目して、再解析しました。
魚種交替メカニズム解明へ一歩
解析の結果、マイワシ資源量が増加に転じた2010年代には、カタクチイワシと重ならないマイワシ単独の産卵場が拡大していることが判明しました。
この傾向は、黒潮の下流域にあたる潮岬から房総半島にかけての表層水温13~20度の海域で顕著に見られたといいます。
マイワシ(提供:PhotoAC)2000年代には同海域の多くがカタクチイワシ単独の産卵場だったことから、海洋環境の変化とともにカタクチイワシの産卵場が縮小し、その後を追うようにマイワシの産卵場が広がったと考えられます。
変化を続ける海洋環境
海洋環境は、気温や海流などの影響により場所ごとに異なる変化を続けています。
こうした環境変動は、プランクトンなど餌の種類や量、魚の成長や成熟、産卵の時期・場所に影響し、その結果として魚の生き残りや資源量を左右するとみられます。
研究グループは、今回明らかになった産卵場の入れ替わりが、イワシ類の魚種交替を支えるメカニズムを理解するうえで重要な材料になると期待しています。
(サカナト編集部)