京王電鉄と米国のディープテック企業Noka.AIは7月8日、奥多摩やまめの養殖最適化を目的とした共同研究「奥多摩やまめ養殖最適化プロジェクト」を開始しました。
日本で初めて「生物学的推論AI」を養殖研究に活用し、成長促進や飼料効率の改善、品質の安定化を目指します。
AIで養殖の成長管理や品質予測を高度化
奥多摩やまめは、1998年に当時の東京都水産試験場奥多摩分場(現・奥多摩魚養殖センター)で開発された「全雌三倍体(全てメスで染色体を3セット持つ)」のヤマメ。通常のヤマメの約2倍にまで成長するといいます。
今回のプロジェクトでは、この奥多摩やまめを対象に、飼料設計や養殖環境の管理、収穫時期の品質予測について、生物学的推論AIを用いて解析を行います。
Noka.AIが開発した生物学的推論AIは、魚類の遺伝子情報やタンパク質、代謝物などのマルチオミクスデータを統合的に解析し、細胞レベルで代謝や栄養応答を推論する技術。これまで経験や勘に依存することが多かった養殖管理に対し、科学的なデータに基づく最適化を図ることを目的としています。
共同研究では、魚の成長や品質に影響を与える栄養素を分析し、効率的な飼料設計を検証するほか、水温や溶存酸素量、pH、養殖密度といった環境条件が成長へ与える影響も解析します。
さらに、分子データや代謝データを活用した品質予測技術の構築にも取り組み、収穫前の段階で成長性や品質を予測できる仕組みの確立を目指します。
京王電鉄のアクアポニックス事業で実証
京王電鉄は、社員発のオープンイノベーションプログラム「My turn」の事業化案件として、2026年3月から京王プラザホテル八王子の遊休施設を活用したアクアポニックス事業を展開しています。
施設内では「ホテルで育て、ホテルで味わう究極の地産地消」をコンセプトに、奥多摩やまめやクレソンなどを生産しています。
京王プラザホテル八王子内で実施しているアクアポニックス事業の様子(提供:Noka Bio,Inc.)奥多摩やまめは、東京都奥多摩地域のブランド魚として知られ、川魚を生食できる希少性や身質の良さから高付加価値食材として注目されています。
一方で、品質を維持しながら安定的に供給するためには、成長過程を科学的に把握し、生産効率や品質を向上させる仕組みづくりが課題となっていました。
養殖の「予測可能性」向上を目指す共同研究
プロジェクトは9月まで実施され、データ統合やAIモデルの学習、最適化案の作成、検証、知見の共有までを段階的に進める予定です。
両社は、経験や勘に依存しがちな養殖管理をデータとAIによって高度化することで、生産の安定化と品質向上を図る考えです。
また、継続的な供給体制の構築を通じて、高付加価値食材としての奥多摩やまめのブランド価値向上や、地域資源を生かした新たな食文化の創出につなげたいとしています。
※2026年7月19日時点の情報です
(サカナト編集部)