日本固有の淡水魚で、国の天然記念物でもありながら、絶滅危惧種の魚<アユモドキ>。
岡山県岡山市の2つのエリアでは、地域ぐるみでアユモドキの保全活動が行われています。
そのひとつである瀬戸町出身の筆者はアユモドキが大好き。そこで7月5日に開催された「2026アユモドキ稚魚観察会」に息子とともに参加してきました。
当日の様子をレポートします。
瀬戸アユモドキを守る会とは?
アユモドキ稚魚観察会を開催する「瀬戸アユモドキを守る会」は、2002年に瀬戸町の吉井川水系でアユモドキが確認された後、アユモドキの保全活動を行うために設立された任意団体です。
会長の小林さんは、岡山淡水魚研究会のメンバーでもあり、以前から県内外の河川における淡水魚調査をしていました。
小林会長とアユモドキ帽子をかぶった加納副会長(撮影:額田善之)瀬戸アユモドキを守る会では、絶滅危惧種ⅠA類 (CR)に指定されているアユモドキを“瀬戸町の宝”として守るべく、産卵用ビオトープの維持管理や密漁の取り締まりのための見回りなどを行っているそうです。
また、地元のキリンビール岡山工場や岡山市立千種小学校では、瀬戸アユモドキを守る会などの専門家の指導のもとアユモドキの人工繁殖を実施。2025年に次いで2026年も産卵と孵化が確認され、アユモドキの人工繁殖に成功しました。
アユモドキってどんな魚?
アユモドキ(学名: Parabotia curtus)はコイ目アユモドキ科の魚で、アユに似た姿をしていることから、この名がつきました。
全長は15cmくらいで、6月頃から数回に分けて産卵するそうです。
千種小学校で人工飼育中のアユモドキ(撮影:額田善之/撮影場所:千種小学校)琵琶湖・淀川水系と岡山県下の数河川にしか分布していない日本固有の希少な魚であるため、国内希少野生動植物種に指定されています。そのため、絶対に捕獲や販売等はしてはいけません。
勝手に捕獲などを行うと、個人では500万円、企業では1億円の罰金となります。
アユモドキ稚魚観察会に参加してみた
アユモドキ稚魚観察会では、産卵場を整備後、アユモドキの稚魚がどれくらい居るのかを確認するために、30名ほどで毎年調査を行なっているそうです。
当日は、岡山市の職員が来ていたり、岡山のケーブルテレビが取材に来ていたり、地域ぐるみの取り組みであることが分かります。
瀬戸アユモドキを守る会のメンバーや岡山市の職員ら(撮影:額田善之)今年は、大雨で増水して水があふれたり、吉井川の堰が開かれて水がなくなったりと、非常に厳しい条件が重なったといい、稚魚数は非常に少ないと予想されていました。
アユモドキの稚魚が見つかった!
小雨が降る中、24名ほどの参加者の懸命な捜索の末、アユモドキの稚魚1匹が見つかりました。
岡山淡水魚研究会の加藤さんが腰より上まで水に浸かりながら発見した場面を、筆者も目撃。胴長を着ているとはいえ、すごい捕獲技術と執念でした。あきらめかけていた状況下での発見となり、感動と感激で胸がいっぱいになります。
体長2cmほどのアユモドキの稚魚(撮影:額田善之)実は、昨年10月下旬にアユモドキ74匹を含む魚が計653匹も死んでいたのが発見されています。アユモドキの減少が懸念されており、関係者はとても心配だったそうです。
この魚の大量死については、未だ原因不明。工場排水や農薬の混入ではなかったそうですが、今後も不安が残ります。
絶滅危惧種など多数の魚や水生昆虫も発見
今回の調査では、絶滅危惧種であるコイ目ドジョウ科のサンヨウコガタスジシマドジョウ(学名:Cobitis minamorii minamorii)の稚魚と成魚のほか、コイ、コウライモロコ、オイカワ、モツゴ、カネヒラ、フナ属、タイリクバラタナゴ、コウライニゴイ、ナマズ、ドンコ、シマヒレヨシノボリなども見つかりました。
コイ目は魚の中でもダントツの種数を誇るため、「ガサガサすればコイ目に当たる」という状況なのでしょう。
絶滅危惧種のサンヨウコガタスジシマドジョウ(左が稚魚で右が成魚)(撮影:額田善之)また、ヒメミズカマキリ、タイコウチ、コオイムシ、ギンヤンマ類やカワトンボ類のヤゴなどの水生昆虫、エビ類のほか、外来種であるアメリカザリガニ、ツチガエルやウシガエルのオタマジャクシなども見つかりました。
インパクトある見た目の<コオイムシ>
卵を背負ったコオイムシも発見。筆者は見るのが初めてで、そのビジュアルに驚きました。
オスの背中にびっしりと産み付けられた卵ですが、実は「別のオスが受精したものであることがほとんど」なのだとか。生存戦略として自分の子どもであるかどうかは重要ではないので、子孫を残すという意味では成功といえるでしょう。
卵を背負ったコオイムシ(撮影:額田善之)なお、条件付特定外来生物であるアメリカザリガニや特定外来生物であるウシガエルのオタマジャクシも多く発見されたことから、アユモドキの保全に大きな影響を与える懸念があります。
特定外来生物とはもともと日本にいない生物で生態系に被害を及ぼすものであり、条件付特定外来生物は一部の規制がかからないものを指します。
淡水魚の保全活動に目を向けよう!
アユモドキやサンヨウコガタスジシマドジョウだけでなく、日本全国で淡水魚の絶滅が危惧されています。
河川のコンクリート化や田んぼ付近の氾濫原(はんらんげん)が減少したり、外来生物に捕食されたりすることで、繁殖場所や絶対数が減少していることが主な原因だとされています。
氾濫原とは洪水時に流水が河道などから溢流して氾濫する範囲の平野を指し、魚や水生生物の繁殖地となる場所のこと。
経済活動において氾濫を無くし治水することは重要ですが、生物多様性を維持するために魚が遡上や産卵できるように構造を工夫しないければ、人間と外来種だけが繁栄する世界になる危険性が高まるでしょう。
ユーコーン型の階段型魚道(提供:PhotoAC)地域によっては、階段状にすることで遡上しやすくした「階段型魚道」が設置されるなど工夫を加えた護岸工事も行われています。
身近な川で魚とりができる未来を残すべく、環境問題に関心を持つことは大切です。筆者も岡山淡水魚研究会のメンバーとしてだけでなく、微力ながらもアユモドキの保全に努めたいと思います。
今回の活動に参加した後、岡山市から資料やメモ帳などのお土産をもらいました。こうした点からも、岡山市の“アユモドキ保全”にかける本気度が感じられます。
岡山市から頂いた資料やクリアファイルなど(撮影:額田善之)小雨が降る中での調査でしたが、とにかく楽しかったので参加して良かったと思います。
住んでいる地域にも「自然に触れられるイベント」や「環境保全に関するワークショップ」があるかもしれません。ぜひ探してみてください。
参考文献・参考URL
環境省「自然環境・生物多様性 アユモドキ」https://www.env.go.jp/nature/kisho/hogozoushoku/ayumodoki.html
環境省「特定外来生物ウシガエル」「アメリカザリガニを野外に放さないで!」
https://www.env.go.jp/nature/intro/4document/files/r_bullfrog_shikoku.pdf
https://www.env.go.jp/nature/intro/4document/files/amezari/kisei.pdf
大阪府立環境農林水産総合研究所「氾濫原~氾濫によって作り出される生物たちの楽園~」https://www.knsk-osaka.jp/_files/00150408/01_tanbo.pdf
国土交通省『魚がのぼりやすい川づくりの手引き』
https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/kankyo/kankyou/sakana_tebiki/pdf/print.pdf