甲殻類に寄生する二枚貝の存在を知っていますか?
二枚貝に寄生する甲殻類はよくカキやアサリの中から見ますが、その逆です。甲殻類に二枚貝が寄生するのです。
甲殻類の場合は貝に共生、寄生することで天敵から身を隠したり、餌のおこぼれをもらったりします。しかし、寄生する貝類は何を目的に付着するのでしょうか。
干潟に生息する甲殻類「アナジャコ」。同種に寄生する二枚貝の一種に「マゴコロガイ」がいます。
アナジャコに寄生する「マゴコロガイ」
最初に「マゴコロガイ」について、ご紹介します。マゴコロガイとはアナジャコという甲殻類の頭胸部(とうきょうぶ)に付着する寄生性二枚貝です。
名前は、アナジャコの頭胸部に付着していることと、背面から見るとハート型に見えることから名付けられました。
マゴコロガイはアナジャコの口元に水管を伸ばして、餌のおこぼれを貰う生態があります。
しかし、アナジャコはこれによって何の影響も受けていないように見えるため、寄生ではなく「片利共生(へんりきょうせい)」なのではないかと考察されています。
アナジャコの頭胸部に付着するマゴコロガイ(提供:カサゴとアサリのお味噌汁)宿主の「アナジャコ」は何者?
アナジャコは干潟の深い所にU字型の穴を掘ってすむ甲殻類。見た目はエビに近いですが、実際はヤドカリに近いグループです。
アナジャコは穴の中で懸濁物(けんだくぶつ)を餌とする「濾(ろ)過摂食」を行います。その懸濁物のおこぼれをマゴコロガイは摂食しています。
アナジャコは、主に有明海などで食用にされますが、全国的な干潟の減少に伴ってアナジャコも数を減らしているそうです。
マゴコロガイの宿主となるアナジャコ(提供:カサゴとアサリのお味噌汁)マゴコロガイの奇妙な繁殖行動
マゴコロガイは、一般的な二枚貝とは異なり「矮雄(わいゆう)」という繁殖を行います。矮雄とは、一匹の雌個体に対し小さな雄個体が複数付着して、雌個体の卵と確実に受精するための方法です。
主に、チョウチンアンコウやフジツボ類に見られる繁殖方法です。アサリやハマグリといった二枚貝は、放精・放卵による体外受精がほとんどです。
宿主に付着しながらの繁殖は難しいため、マゴコロガイは繁殖方法が矮雄に進化したのかもしれませんね。
一般的にな二枚貝とは異なる身体のつくり
マゴコロガイはアナジャコに付着するため、アサリなどの二枚貝とはやや身体構造が異なってきます。
特に違うのが、「足」の作り。アサリなどの二枚貝は砂や泥に潜るために、足が大きく太く発達していますが、マゴコロガイの足は細長くひょろひょろとしています。
マゴコロガイは宿主にずっと付着しているため、足を使う場面が少なく、マゴコロガイの足はアサリなどの足と比べると筋肉質では無いのです。
未知の物語を探検してみよう
筆者は、一般の人があまりが知らないような、マニアックな生き物に焦点を当てて研究するのが好きです。なぜなら、未知の「物語」があるから──それは奇妙で、不思議で、輝いて、煌めく物語です。
皆が注目していない生きものにも、こういった面白さは隠れているのです。
馴染みのある生き物に触れるのも良いですが、たまにはマニアックな生き物にスポットライトを当てるのも良いかもしれませんね。
(サカナトライター:カサゴとアサリのお味噌汁)