日本には魚を使った食べ物がたくさんありますが、日本人は魚の卵(卵巣)も貴重な食料として発展させてきました。
今回は日本で食べられている魚卵についてご紹介します。
トビウオの子「とびこ」
「とびこ」はサラダや寿司種として有名なので、知っている人も多いのではないでしょうか。その一方、とびこがなんの魚の卵か知らない人も少なくはありません。
とびこはトビウオの卵を味付けしたものです。トビウオの卵は粒が1〜2mm程度と小さいことに加えて、卵の皮が硬いことから、独特な食感を生み出します。
とびこの原料となるトビウオの産地としては主にインドネシアとペルーがあげられ、産地によってとびこの粒の大きさや硬さが異なるといいます。ちなみに、インドネシアとペルーではトビウオの卵を食べる習慣はないそうです。
とびこは回転寿司で定番の寿司種でしたが、価格高騰を受け、現在ではとびこに似た食味のししゃもの魚卵が軍艦で提供されることが多いです。
なお、「とびっこ」と呼ばれることもありますが、こちらは水産加工会社である「かね徳」の登録商標です。
いくらと筋子の違い
「いくら」と「筋子」、どちらもサケ・マス類の魚卵ですが、その違いを知っている人は多くはありません。
簡単に言えば、卵巣膜に入ったそのままの状態を「筋子」と呼び、卵巣から卵をバラした物を「いくら」と呼びます。ちなみに、いくらの語源はロシア語で「魚卵」を意味する単語が由来だそうです。
いくらはプチプチとした触感であるのに対して、筋子はねっとりとした濃厚な味わいを持つことが特徴です。秋鮭漁が盛んになる9〜11月頃が旬であり、この時期が最も濃厚な味わいで美味しいとされています。
スケトウダラの子「たらこ」
ごはんのお供で大人気の「たらこ」は、スケトウダラの魚卵を塩漬けした食品です。スケトウダラがたくさん漁獲される北海道ではたらこの生産量も多く、全国の6割は北海道で生産されています。なお、北海道ではマダラの子を煮付けなどで食べる文化があり、こちらも「たらこ」と呼びます。
たらこをさらに唐辛子と調味料で味付けした食品が「明太子」であり、こちらは福岡県や山口県の名物になっています。明太子の発祥は朝鮮半島であり、後にそれが山口県・福岡県に広まり、今ではたらこよりも多く生産されています。
秋田名物「ブリコ」
最後にご紹介するのが「ブリコ」です。ブリと付くのでブリの卵と思いきや、ハタハタという魚の卵です。ハタハタを原材料にした「しょっつる」という魚醤が有名ですね。
普段は深海に生息するハタハタですが、産卵期になると浅瀬に接岸し、海藻に卵を産み付けます。ハタハタの卵は非常に特徴的で、赤や黄色、緑など様々なカラーバリエーションがあります。
ブリコは粒が大きくて硬い皮が特徴的な魚卵で、独特な粘りがあることも知られています。ブリコは主に煮付けや塩焼きで食べられています。
何の卵なのかを知ろう
このように日本には様々な魚の卵を食べる文化があります。一方、産卵前の成魚をたくさん捕ってしまうと大きな漁獲圧となってしまいます。
これからも魚卵の食文化を残していくためには、適切な資源管理が望まれます。消費者としては、それぞれの魚卵がどの魚のものなのかを知り、その魚が置かれた状況を認識することが大事なのかもしれません。
(サカナト編集部)