みなさんはクマドリをご存じですか?
クマドリは一見地味ながら色や模様が派手な熱帯魚です。
シュノーケリングでもよく見かける魚ですが、筆者は以前、襲われたことがあるのです。今回は、クマドリの生態や筆者が襲われた理由について紹介します。
歌舞伎役者の隈取りのような模様をもつ魚
クマドリはサンゴ礁に普遍的に生息するモンガラカワハギ科の魚で、学名はBalistapus undulatus。
名前の由来は、橙色の派手な線が歌舞伎役者の隈取りを連想させるという理由からです。
体色は暗褐色や暗緑色、体側には橙色の線が多数斜めに入っています。尾びれは橙色で、尾柄部にある大きな棘は黒い斑で隠されていますが、今回見たものはどれも黒斑はありませんでした。
和歌山県以南の暖かい海のサンゴ礁域に生息しています。ほかにも、インド洋や西大西洋などに多く分布します。
甲殻類や貝類、藻類だけでなく、ウニやサンゴまで食べる雑食性で、気性が荒いことで知られています。
クマドリはダイバーにとって厄介者?
クマドリをはじめとするモンガラカワハギ科の魚は警戒心が強い魚です。特に、ゴマモンガラはダイバーにとって厄介者として知られています。
産卵期には、警戒心が強くなりすぎて、近づくものを片っ端から攻撃するようになります。テリトリーに入ってしまうと指をかみちぎられることもあるため、注意が必要です。
オスは産まれた卵を守っているため、攻撃するのはもっぱらメスとなります。
クマドリに襲われた話
以前、シュノーケリングを楽しみながら魚を撮影していると、さっきまで大人しく砂をついばんでいた魚が突然踵を返しました(下記写真左)。
何事かと驚いていると、左手の指をかじってきました(上記写真右)。
右手はそのままカメラを持っていたので写真を撮ることができましたが、まさか自分が襲われるシーンを撮影できるとは……。急に襲われたことで混乱していたので、魚体が全部入りませんでしたが、本当にビックリ。
幸いなことにすぐ離脱し、指にもケガがなかったので、そのままシュノーケリングを続けることができました。ですが、とても怖かったです。これ以降は、モンガラカワハギ科の魚と距離を取って撮影することにしています。
ただ、それでも個体によっては追いかけてくるそぶりを見せたゴマモンガラもいたので、とてもドキドキした体験でした。みなさんもモンガラカワハギ科の魚には気をつけましょう。観察する機会があれば、テリトリーに入らないよう遠巻きから観察してみてください。
(サカナトライター:額田善之)