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6億年も生き抜いてきた動物? 最古の多細胞動物<海綿>は最適化されたポンプ機能を持つことが判明

現存する最古の多細胞動物と呼ばれる海綿動物は、浅海から深海、淡水域にまで生息する海綿動物は原始的な生物です。

多くの海綿動物は岩や石などに固着して生活をする固着性の動物でもあり、水を大量に取り込みろ過することにより栄養を摂取。このようなろ過摂食をするために海綿動物は「襟細胞室」と呼ばれるポンプ機能を担った球形の構造を持ちます。

一方、この襟細胞室がなぜ球形なのかはわかっていませんでした。

そんな中、東北大学、イギリス、フランスの共同研究チームは、海綿動物の襟細胞室の形状がポンプ機能を最適化していることを解明したようです。

現存する最古の生物「海綿動物」

6億年にわたり地球に存続している海綿動物は現存する多細胞動物の共通先祖に最も近いとされており、非常に古い化石が発見されているほか、現代でも世界中で多くの種が繁栄しています。

海綿動物は生息環境は様々ですが、一部の淡水産を除き、多くが海産。浅海域から深海にまで生息し、深いところでは水深8000メートルを超える海底からも発見されています。

クロイソカイメン(提供:PhotoAC)

また、一部の海綿動物は薬の開発(クロイソカイメン)や体の洗浄に用いられており、特にスポンジのような用途があることから、英語では「シースポンジ」と呼ばれているようです。

ほとんど動かない動物

海綿動物は原始的な生物であると同時に岩や石に固着する固着性の動物でもあり、筋肉は持ちません。そのため海綿動物はほとんど動かず、固着した岩などで暮らし続けます。

ミズガメカイメン(提供:PhotoAC)

加えて、神経や内臓も欠く非常につくりが単純な体であることが知られ、一般に水を取り込み有機物をろ過して摂取する「濾過摂食者」です。

このようなろ過摂食を行う海綿動物は「襟細胞室」と呼ばれる球形の構造を持っており、これがポンプ・フィルタ機能を担っています。

しかし、なぜ「襟細胞室」が球形の構造なのかは謎とされていました。

最適化されたポンプ・フィルタ機能

東北大学、イギリス、フランスの共同研究チームが行った研究(論文タイトル:The Architecture of Sponge Choanocyte Chamber is Well Adapted o Mechanical Pumping Function)では、襟細胞室の3次元計算モデルを開発。球殻の内側で波打つ鞭毛が作る流れのシミュレーションを行いました。

その結果、出口の大きさ、鞭毛の波の数にはポンプ機能を最大化する値が存在し、ポンプ機能が最適化される襟細胞室の特徴と、実際、生きた海綿の襟細胞室の特徴とよく一致することが分かったのです。

また、海綿は水を流す仕組みを複雑化する進化をしてきたと考えられていますが、水路が複雑になると水を流す抵抗も大きくなります。

しかし、海綿は襟細胞室を球形にすることにより、高い圧力を生み、水路の抵抗に打ち勝っていることが示唆されました。

優れたポンプが生き抜く秘訣?

このように最適化されたポンプ機能が、海綿動物が数億年前から生き抜いてきた秘訣と考えられています。

また、海綿の最適化されたポンプはマイクロポンプの研究において、新たな知見を与えることが期待されているようです。

(サカナト編集部)

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サカナト編集部

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