春になると何か新しいことを始めたくなるものです。
かく言う筆者も、去年から昼間のビーチコーミング(浜辺に打ち上げられた漂着物を収集したり観察したりすること)を始め、週に一度程度のペースで継続。それもただ歩くのだけでは面白くないので、波打ち際に落ちている貝殻やカニなどを観察し、時に撮影したり図鑑で同定したりすることが決まりです。
特に最近は、OLYMPUS(現・OM SYSTEM)の「TG-5」というカメラで波打ち際に落ちているものを接写するのにハマっており、気になったものを手当たり次第、<顕微鏡モード>で撮影して遊んでいます。
この小さな世界に広がる発見が、私の好奇心をくすぐって止まないのです。
適当に撮っても楽しめる
非常に身近なものであっても、TG-5を使えば肉眼では見えない世界を覗くことができます。

筆者が「接写」の魅力の一つと思うのが、適当なものを撮影しても楽しめるということです。
早速、海岸に到着して一番最初に発見したウズイチモンジガイを試しに接写。TG-5ではレンズから被写体まで、1センチの距離まで近づくことができます。

限界まで近づいて撮影したウズイチモンジガイの貝殻はイボの間隔から大きさ、頑張れば数まで数えられそうなくらいです。
ウズイチモンジガイを見るのは初めてではないため、殻表にイボのようなものが発達しているのは知っていましたが、その大きさや並びまでは知りませんでした。正直、もっと寄って撮れたかなと思いつつ、これが今の私の技量では限界なのかもしれません。
ちなみにこのウズイチモンジガイは蛍光物質を含んでいるためか、UVライトを当てると光るので見つけた人はぜひ試してください。
気になったものを撮影する
次に撮影したのは、波打ち際よりもやや離れた位置に落ちていた大きな海藻の束。詳しい種類はわからないものの、アカモクという日本各地に分布するホンダワラの仲間に似ている気がします。

この類の海藻はしばしば流れ藻となり、生き物の隠れ家や産卵期になるようです。時に打ち上げられた流れ藻の中に生物が残っていることもあるみたいですが、今回発見したものには見られませんでした。
TG-5で接写することにより、葉の形状まではっきりと観察することができます。

海藻の撮影を終えて、しばらく海岸を歩いていると、この辺では珍しいキサゴまたはダンベイキサゴと思われる貝殻を発見しました。

地域差によっては「ナガラミ」と呼び食用にしているほか、小型種のイボキサゴはかつて「おはじき」にも使われていたそうです。

この貝殻は殻径3センチ程でしたが、TG-5を使って殻頂付近を撮影。吸い込まれるそうな螺旋と削れて露出した真珠層のような構造が美しい貝殻でした。
様々な貝殻を接写してみる
ミゾガイのような非常に脆い二枚貝も発見。力を入れて摘まむとボロボロになってしまうほど弱い貝殻ですが、接写するとそれなりに迫力がありますね。

グレーの砂浜の上でひと際目立つ二枚貝はミドリイガイ。海岸にはイガイ科の二枚貝がよく落ちていますが、中でも本種はよく目立ちます。
ミドリイガイの原産地は東南アジアであり、日本では国外外来種のようです。

変わった形のホタテガイが落ちていると思ったら、小型種のトマヤガイと思われる二枚貝でした。

接写すると殻表に網目状の構造が付着していることがよくわかります。この網目状の構造も何かの生き物なのでしょうかね。
このような感じで、かれこれ30分ほど低姿勢で撮影を繰り返しました。
謎の物体を発見!
そろそろ帰ろうかと思った時、海岸で謎の物体を発見。
白くてでこぼこした構造物。これが一体何かわかりますか?
ヒントはある生物の体の一部です。

正解はコウイカ類の甲。

コウイカを含むイカ類では胴に甲を持っており、スルメイカやアオリイカなどのツツイカ類では柔らかい「柔甲」を持つのに対して、コブシメやコウイカなどのコウイカ類は舟のような形をした頑丈で大きな甲を持ちます。
イカ類は貝類の仲間であることから、この甲はアサリやハマグリでいう貝殻にあたるとされ、コウイカ類ではこの甲で浮力調整を行っているようです。
また、コウイカ類の甲にはエボシガイ付いていることもあるようで、このことは甲が海面を漂っている可能性を示唆しているといいます。
接写すると新しい発見がある
このように、普段歩いている海岸もカメラを一つ持つことによって新しい発見があります。
今回は接写ができる特殊なカメラを使用しましたが、スマートフォンのカメラ機能でもある程度は寄って撮影できるので、まずは手軽な撮影機材をもって海岸を歩いてみてはいかがでしょうか。
(サカナトライター:まうまう)