国立極地研究所の渡邊日向特任研究員と高橋晃周教授を中心とした日本・フランスの共同研究グループは、アデリーペンギンにビデオカメラを装着し映像を分析することで、同種が翼足類(よくそくるい)を積極的に食べていることを明らかにしました。
この研究成果は「Marine Biology」に掲載されています(論文タイトル:Video evidence of pteropod predation highlights diet flexibility in Adélie penguins)。
南極海の翼足類
翼足類はクリオネなどを含む浮遊性の軟体動物。このグループは南極海に広く分布し、ときに高密度で出現するといいます。
翼足類(提供:PhotoAC)また、透明な殻を持つ有殻翼足類は、酸性化や水温上昇の影響を受けやすいことから、個体数現象や分布の変化を通じて、将来の南極海における食物網に影響を及ぼす可能性が指摘されてきました。
しかし、南極海の食物網において翼足類が、どのような役割を担っているのか、他の海洋動物にどう利用されているのか、詳しいことはわかっていませんでした。
アデリーペンギンは翼足類を捕食
研究では、南極のフランス基地周辺で繁殖するアデリーペンギン8個体をに小型ビデオカメラを装着し、潜水中の行動の記録がおこなわれました。
アデリーペンギン(提供:PhotoAC)映像を解析した結果、この地域の主な餌であるオキアミや魚に加え、アデリーペンギンが翼足類を頻繁に食べていることが明らかに。
合計87時間にも及ぶ映像の中には、1449回もの翼足類を捕食するシーンが収められていたといいます。これにより、翼足類がアデリーペンギンの餌資源になっていることが映像から示されたのです。
今まで、翼足類が大型海洋動物の餌になる可能性が指摘されてにもかかわらず、実態は謎に包まれていました。
その背景には、翼足類は消化後に痕跡が残りにくく、内容物の分析など従来の方法では検出が難しかったと考えられています。
複数地点での調査が求められる
今回の研究によって、翼足類がアデリーペンギンの餌資源になっていることが明らかになりました。
今後は、複数の調査地や複数年にわたる継続的な調査が必要とされています。
これらの知見の積み重ねは、将来の南極海生態系の変化を理解するうえで重要と考えられています。
(サカナト編集部)