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8000万年以上前の地層から産出! 北海道の<異常巻きアンモナイト化石>新属新種として記載【北海道羽幌町】

北海道の各地から産出する化石は、いずれも学術的に貴重なものばかりです。

近年は新種も相次いで報告されおり、2025年に新種記載されたゾウギンザメ科の Callorhinchus orientalis や介形虫の Woodeltia sorapuchiensis が例として挙げられます。

そうした中、深田地質研究所の相場大佑氏は、北海道苫前町・羽幌町の中生代白亜紀サントニアン期の地層から産出した、異常巻きアンモナイト化石3点を調査し、新種であることを明らかにしました。

この研究成果は『Paleontological Research』に掲載されています(論文タイトル:Heterocarinella, a new ammonoid genus: Turrilitidae survived into the Santonian (Late Cretaceous) in the north-western Pacific realm)。

北海道から新種のアンモナイトを発見

今回、発見された新種の化石3点のうち2点は、20年以上前に在野の研究家2名が採集したもので、もう1点は横浜国立大学の卒論生1名が15年前に採集したものだといいます。

羽幌町の風景(提供:PhotoAC)

2025年に相場大佑 氏はこれらの標本について、X線CT解析を行いツリリテス科の新属新種であることを確認。今回、出版された論文で新種記載され、Heterocarinella japonica と命名されました。

殻にキールを持つ異常巻きアンモナイト

本種は巻貝のような螺旋塔状の殻を持つ「異常巻きアンモナイト」。殻の側面に「キール」を持つことが大きな特徴であり、Heterocarinella の“carine-”はラテン語でキールを意味します。

また、“Hetero-”はギリシャ語で「異なる」を意味する単語に由来しており、本種が殻の側面にキールを持つ異常巻きアンモナイトであることが属名から読み取ることができます。

白亜紀に繁栄した2グループ

Heterocarinella japonica のように螺旋塔状の殻を持つ白亜紀後期の異常巻きアンモナイトとして、ツリリテス科とノストセラス科が知られています。

この2グループは生存期間が異なると考えられており、ツリリテス科は白亜紀前期アルビアン期中期~白亜紀後期セノマニアン期末(約1億800万年前~9390万年前)、ノストセラス科は白亜紀後期チューロニアン期~マーストリヒチアン期末(約 9390万年前~6600万年前)に生存していたと考えられているようです。

今回、発見された新種の異常巻きアンモナイトの化石は3点とも、ノストセラス科が繁栄していた白亜紀サントニアン期(約 8630万~8360万年前)の地層から発見されています。

新種はツリリテス科に属する

ツリリテス科とノストセラス科の殻は形態的によく似ています。

しかし、殻内部の構造は異なり連室細管と呼ばれる構造が、これまで報告されてきたツリリテス科のほとんどで上部にある一方、ノストセラス科では中部か下部にあるといった違いを持ちます。

Heterocarinella japonica はX線CT解析により、連室細管が上部に位置していることが確認されていること、加えてツリリテス科の特定属と類似した特徴を持つことから、本種はツリリテス科に属するのが妥当であると結論付けられました。

ツリリテス科は定説より長く生存していた

ツリリテス科の Heterocarinella japonica が発見されたのは、かつてノストセラス科が繁栄していた約8630万~8360万年前の地層。つまり、既に絶滅していたと思われていたサントニアン期までツリリテス科は生存していたことが明らかになったのです。

また、先行研究を精査した結果では、ヨーロッパのチューロニアン期~コニアシアン期の地層から産出する、 Tridenticeras 属も螺環上部に連室細管があることが判明し、本属もツリリテス科の生き残りであることが明らかになっています。

北海道を含む太平洋北西部は避難所

こうした結果から、ツリリテス科はアルビアン期~セノマニアン期には、世界中に分布していたこと、セノマニアン期とチューロニアン期の境界で絶滅イベントを生き抜きぬいたこと、多様性を減少させヨーロッパで僅かに分布していたこと、サントニアン期には太平洋北西地域で生き残っていたことが判明しました。

広域に分布していた生物がやがて分布を狭め、最終的に太平洋北西地域のみに生息するという現象は他の白亜紀アンモナイト類でも確認されているといいます。

そのため、今回の結果は太平洋北西部が白亜紀アンモナイト類の避難所になっていたことを改めて示すものとなったのです。

分類学でも現代技術を用いた研究が重要

今回の研究によって、北海道苫前町・羽幌町の中生代白亜紀サントニアン期の地層から産出した異常巻きアンモナイトの化石が、新属新種であることが示され Heterocarinella japonica と命名されました。

また、本種はツリリテス科に属することが妥当とされ、サントニアン期には絶滅していたと考えらえていたこのグループが、分布を狭めつつ生き残っていたことも明らかになっています。

この成果は北海道が白亜紀アンモナイト類研究における重要な地域であること、X線CT解析などを用いた内部構造の詳細な観察・比較が重要であることを示すものとなりました。

サカナト編集部

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