水槽で淡水生物を飼育していると、ある日突然、体長数ミリ程のうねうねした生き物がガラス面や水草などに付着していることがあります。
小学生の頃、学校の教室で飼っていたメダカ水槽でうねうねした生物「ヒドラ」をたまたま見つけた経験と、個人的後悔から記します。
それはメダカの水槽を覗いていて気がついた
小学生の頃、教室の後ろにメダカの水槽が置かれていて、休み時間に時々見に行っていました。
ある日、いつものように水槽を覗くと、ガラスの表面にまるで熊手のような、とても小さなものが付着していました。よくよく見ると、うねうねと動いています。
「うわ、これなんだっけ!?」
どこかで見たことがあるような……必死で記憶をたどって、以前に図鑑で見たヒドラでは……と思いつきました。
ヒドラはクラゲやイソギンチャクの仲間
淡水性ヒドラは淡水に住む刺胞動物の仲間で、イソギンチャクやサンゴと同じグループの生き物です。
大きさは数ミリから1センチほど。花のように広がっているのは触手で、獲物がこれに触れると、細かい毒針がたくさん発射される仕組みになっています。
これを使ってミジンコなど小さな生き物を捕らえ、触手の根元にある口へと運んで食べます(水中の射撃手 ヒドラの秘密-NHK for School)。
熱帯魚を飼育している方の間では、稚魚を食べてしまう厄介者として知られています。
ヒドラはどのように発生・再生するか
ちなみにヒドラの仲間は、海にもたくさんの種類が生息しており、姿や大きさ、ライフサイクルなど非常に多様で多彩です。
淡水性ヒドラは、花ならば柄の部分にあたる柱体部と呼ばれる部分から、まるで脇芽が出るように新たなヒドラが成長し、やがて分離します(環境によっては有性生殖もします)。
しかも、体を切断しても、数日ほどでまた元通りの体に戻る再生力を持っています。興味深い生態から、よく実験に使用される生物のひとつです。
ヒドラの名前の由来はギリシャ神話に登場する、ヘラクレスに退治された9つの首を持つ(100とも言われる)水蛇、レルネのヒドラ(ヒュドラ)から来ています(山下圭司(2016)、ヒドラ 怪物?植物?動物!、岩波書店)(岩波科学ライブラリー・山室静(1962)、ギリシャ神話、社会思想社 現代教養文庫)。
ヒドラはどこで見られる?
淡水性ヒドラは池や沼など水草や落ち葉などが溜まった、あまり流れのないところによく生息しています。とても小さな生き物なので、水草や落ち葉ごと採取して探すと見つかることがあります。
海にすむヒドラの方がはるかに種類が多く、生息域も多種多様で、石や岩、海藻や貝殻などの表面から、カニやホヤ類など他の生物の表面など様々なところに付着して生息しています。
では、水槽のヒドラはどこからやってきたのか? 考えられる事のひとつは、水槽内に入っていた水草に付着してきたのでは…ということでした。
冒頭にご紹介した小学生当時の水槽内には、水草の一種であるマツモがぎゅうぎゅう詰め状態で入っていました。おそらく何らかの形でそのマツモと共に、水槽に入り込んだのではと思われます(水槽の中の小さな怪物「ヒドラ」 ~顕微鏡の世界~-東山動植物園)。
結局、水槽のヒドラはどうなったのか
さて、メダカ水槽で見つけたヒドラはその後どうなったのか。
惜しむらくは肝心なその後の記憶が全くないということ。何かに記録しておけば良かったのに「もったいない!」と、とても後悔しています。
ただ、ヒドラが水槽内で増殖した記憶もありません。ひとつの可能性として、水槽内を清掃した際に駆除されてしまった形になったのかもしれません。
いつの間にか、結末がうやむやになってしまった、ヒドラとの初の遭遇。またいつか姿を見てみたいと思うと同時に、この文章を書くにあたってヒドラを勉強し直して、あまりに奥深いヒドラの世界を実感しました。
(サカナトライター:atelier*zephyr)