サンゴは“岩などに固定されて動かない生き物”というイメージを持つ人が多いかもしれません。
しかし、中には自分で移動するサンゴもいます。
「クサビライシ」と呼ばれるサンゴの仲間は、ゆっくりと海底を移動することができる珍しい存在なのです。
ハードコーラルのサンゴとは?
世界には約800種類、日本には約400種類のサンゴが生息するそうです。そして、サンゴはさまざまな方法で分類されますが、その一つとして骨格の違いにより分類する方法があります。
綿密で硬い骨格を持つ「ハードコーラル」と、柔らかい石灰質の細かな骨格を持つ「ソフトコーラル」に分ける方法です。
ソフトコーラルに分類されるサカヅキウミキノコ(提供:PhotoAC)ハードコーラルのサンゴはサンゴ礁を形成するミドリイシやハマサンゴなどがあり、ソフトコーラルにはウミトサカやウミエラ、ウミキノコなどのサンゴが挙げられます。
クサビライシはハードコーラルに分類されます。
<クサビライシ>はポリプを伸ばすと変貌
クサビライシ科(Fungiidae Dana)のサンゴには、海底に固定されたまま成長する「固着型」と、海底を移動できる「自由生活型」があり、自由生活型のほうが多いとされています。
マルククサビライシ(提供:PhotoAC)多くのサンゴは岩などに付着し、ポリプが分裂や産卵によって増えながら群体をつくり、サンゴ礁を形成します。
一方、クサビライシ科の自由生活型は群体をつくらず、一匹狼のように単独で生活します。
はじめは岩に付着した小さなポリプですが、キノコのような形に成長して直径5cmほどになると上部が基部から外れて海底に落ち、自由に移動しながら生活するようになります。
ポリプを伸ばしたイソギンチャクのようなクサビライシ(提供:photpAC)なお、クサビライシがポリプを伸ばすとイソギンチャクのような姿になるので、その変貌ぶりに驚くことでしょう。まるでウニがイソギンチャクに変身したように見えるのです。
軟体部分をぜん動運動させて動くため、移動速度はとてもゆっくりですが、サンゴの中では珍しく、独特な生存戦略です。
クサビライシを探しに行こう!
クサビライシはサンゴ礁に住みついているため、琉球列島など日本近海のダイビングスポットでもよく見つけることができます。
モルディブで見つけたクサビライシの仲間(撮影:額田善之)また、水族館で観察することもできます。ダイビングやシュノーケリングはハードルが高いという人も、水族館であれば気軽に観察することが可能になりますね。
不思議なサンゴ、クサビライシ──ぜひその姿を観察してみてはいかがでしょうか。特に、ポリプが伸びるビフォーアフターには感動することでしょう。
(サカナトライター:額田善之)