冬も終わり、私の住む関東にも桜の季節がやってきました。
筆者は今年もいろいろな“冬に美味しい魚”を食べてきたものですが、今年とくに印象的だった冬の魚は「ゲンゲ」の仲間でした。
ゲンゲとは?
ゲンゲは『日本産魚類検索 第三版』(2013)に準拠した分類ではスズキ目・ゲンゲ亜目・ゲンゲ科の魚類の総称です。
分布域は世界の温帯~寒帯、一部の種は亜熱帯域や熱帯域にまでおよび、大部分は深海底に生息します。
ゲンゲ科魚類のいろいろ(提供:椎名まさと)名前の由来については諸説あり、“下の下”という意味である、とされたり、“玄魚(黒色の魚)”という意味であるとされています。
ゲンゲに近いとされる魚
ゲンゲ科魚類の多くはウナギの仲間によく似た見た目をしておりますが、ウナギの仲間とは縁遠いグループです。また従来は、アシロの仲間などに近いとされたことがありましたが、現在では異なるグループとされています。
ゲンゲ科に近いものとしては、同じゲンゲ亜目のなかにタウエガジ科やメダマウオ科、ニシキギンポ科、オオカミウオ科の魚がいます。たとえば、磯や波止釣りのゲストでおなじみのダイナンギンポであるとか、北海道で釣れるガジの類、天ぷらで美味しいギンポなどと具体的な種名を記せば親しみもわいてくるかと思います。
そんなゲンゲ亜目ですが、近年はカジカの仲間と近い関係にあるとされており、カジカ科の含まれるカサゴ目の中にゲンゲ亜目を含めたり(Nelson et al., 2016)、カジカの仲間をスズキ目の中に含め、ゲンゲ亜目と近い位置においたりする(中坊編,2013)などされています。
食用になるゲンゲ
ゲンゲ科魚類は日本近海には60種以上が生息しているようですが、その中で食用になるのはほんのわずかな種のみ。日本でゲンゲ科の魚を食べる文化が根付いているのはほとんどが日本海側で、富山県や石川県などの北陸地方、山陰地方などです。
もともとは「甘エビ」として知られるホッコクアカエビを漁獲するときに混獲されていたもので余り利用されていないどころか、やっかいものとしていい扱いをされなかったといいます。
ゲンゲ科の魚には多くの水分が含まれており、鮮度が落ちやすく、そうなると独特のにおいを発するからというのもあるのでしょう。
しかし、最近はゲンゲも食用魚として見直されており、とりわけノロゲンゲなどは身に多くのコラーゲンを含むところから価値が高まっており、ゲンゲを使った栄養補助食品さえ開発されているほどです。
ゲンゲを購入!
筆者のすむ茨城県南部のとあるスーパーでは、テナントに魚屋さんが入っていて、そこそこ変わった魚介類を扱っています。
その魚屋さんで、ゲンゲ科の魚を発見。ゲンゲ科の魚を茨城県内のスーパーで見たのは、これが初めてです。
スーパーで売っていたゲンゲ(提供:椎名まさと)ひとつのパックに2匹が入っていて、購入したときは2匹ともカンテンゲンゲかと思いましたが、パックを開封してみると2種のゲンゲであることがわかりました。
異なる2匹のゲンゲ(提供:椎名まさと)いずれもゲンゲ科・シロゲンゲ属の深海魚である、カンテンゲンゲとシロゲンゲです。
カンテンゲンゲ
カンテンゲンゲ Bothrocara tanakae(Jordan and Hubbs, 1925)はゲンゲ科・シロゲンゲ属の魚です。
北海道・東北地方の太平洋岸、新潟県から山陰地方の日本海岸の水深900メートル以浅の深海底に生息し、深海底曳網で数多く漁獲されます。大きいものでは全長50センチをこえるくらいにまでなりますが、この個体は30センチを少し超える程度の個体でした。
カンテンゲンゲ(提供:椎名まさと)筆者は2011年に三陸沖産のカンテンゲンゲを愛知県名古屋市の魚市場で発見、購入し食べたことがありますが、そのとき以来、久しぶりの入手です。
シロゲンゲ
もう一方のシロゲンゲ Bothrocara zestum Jordan and Fowler, 1902も、ゲンゲ科シロゲンゲ属の魚です。
この種も全長60センチを超える大型種ですが、この個体は小型で、同じパックに入っていたカンテンゲンゲよりもわずかに大きいくらいのサイズでした。
シロゲンゲ(提供:椎名まさと)本種は日本海にはいないらしく、八丈島近海、相模湾、千葉県以北の太平洋岸、北海道オホーツク海に分布しており、水深1620メートル以浅の深海から底曳網漁業で漁獲されます。
海底でじっとしていることが多く、見た目は鈍そうですが意外と動物食性が強いらしく、ソコダラ科の魚の小型個体などもまるごと食べてしまいます。
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