ヌノサラシという魚を知っていますか?
少し不思議な名前は、身体の“ある特徴”から名付けられました。一目で魚の名前とわかる人は少ないのではないでしょうか。
ヌノサラシは世界の広い範囲に分布しており、英語圏では「soapfish(ソープフィッシュ)」と呼ばれているそう。
【画像】英語で“Goldribbon soapfish”と呼ばれるルリハタの刺身
実はこの魚、他の魚と混泳することができないのです。その理由は、英名の由来に隠されています。
独特な模様をもつヌノサラシ
ヌノサラシ(学名:Grammistes sexlineatus)は、スズキ目ハタ科ヌノサラシ属に分類される魚。岩手県以南の日本沿岸や、インド洋~太平洋までの浅い海のサンゴ礁などに広く分布しています。
ヌノサラシの幼魚(提供:PhotoAC)黒色の体色に淡黄色から白色の6本程度の縦縞を有しており、加齢とともに縦じまが点々に変化していきます。成魚の模様は、まるで動物のバクの幼獣のようです。
小魚や甲殻類などを捕食する肉食性の魚で、約25cmほどになります。
<ヌノサラシ>の名前の由来
ヌノサラシは漢字で「布晒(ぬのさらし)」、英語で「soapfish」と呼ばれます。
「布晒」という名前の由来には諸説ありますが、ヌノサラシの模様が川で白い布をさらしている様子に似ているからという説が有力です。
英名「soapfish」の由来は、興奮したヌノサラシが分泌する粘液が泡立つことからきています。“石鹸のように泡立つ魚”ということでしょう。こちらも見たままを端的な表現で表す海外ならではのネーミングですね。
ヌノサラシは強い毒を持つ
ヌノサラシの英名「soapfish」の由来となっている、泡立つ粘液には強い毒性があります。
ヌノサラシを興奮させるとこの粘液が分泌されるため、他の魚と混泳させると水槽内の魚を殺してしまうことも。
この毒は「グラミスチン」と呼ばれるペプチド性の毒素で、魚毒性だけでなく哺乳類にも毒性があります。血液に含まれている赤血球を破壊する溶血作用を持つので、人間が食べると死に至ることもあります。
実際に、ニューギニアでは本種を食べた人が死亡したという報告もあるようです。日本においても食用とはなっていません。
ヌノサラシは泡立つような粘性のある毒を分泌することで、捕食者から身を待っているのです。魚の護身術には色々な種類があって面白いですよね。
なお、ヌノサラシ同士で共食いをすることもあり、ヌノサラシ自体はこの毒に耐性があるそうです。
ヌノサラシはどこで見られる?
ヌノサラシは、沿岸の浅瀬でよく見られる魚です。サンゴ礁でのダイビングやシュノーケリングでも見ることができますが、水族館で観察するのが簡単です。
香川県高松市にある新屋島水族館のリニューアルに伴い、仮設として期間限定で開かれている「市場水族館」では2匹が展示されていました。そのほか、各水族館における毒がある生物をテーマにした企画展などで展示された例もあります。
ヌノサラシ(撮影:額田善之/撮影場所:市場水族館)真正面の顔と横からみた顔は少し印象が異なるので、見比べると面白いかもしれません。
受け口でぼんやりとしたような顔を見ていると、なんだか癒されますよ。
(サカナトライター:額田善之)
参考資料
Nature of Kagoshima Vol. 42, Mar. 2016 吉田朋弘 「九州初記録のハタ科魚類ヌノサラシ Grammistes sexlineatus」