「カメ」と聞くと、のんびりしていて反応が少ない生き物とイメージする人が多いのではないでしょうか。
私もクサガメを飼う前は、「大人しくて地味な生き物」という印象を持っていました。しかし実際に一緒に暮らしてみると、その印象はガラリと変わりました。
私の姿を見ると水槽の中をバタバタと大暴れしながら近づいて来たり、手からエサを食べ、重い甲羅を背負いながら一生懸命段差を登ろうとする姿は、思わず応援したくなるほどです。
クサガメと暮らす毎日は、思っていた以上に発見の連続でした。
クサガメを飼い始めた日
生き物好きな息子が「カメを飼いたい!」と言いはじめ、ちょうどご縁があって10cmほどのクサガメを我が家に迎えることになりました。
甲羅を持って顔を近づけてみると、クサガメは甲羅に隠れることなく、顔を突き出してジーッとこちらを見つめてきます。手のひらに乗せると、4本の足でガシガシと進み始めました。
のんびりとしたカメを想像していた私にとって、その活発な姿は意外で、すっかり心をつかまれてしまいました。
クサガメ(提供:クラシスキー)一緒に暮らしてみると、さまざまな“かわいい行動”を見せてくれるようになりました。
はじめは警戒していましたが、今では私が近づくとバタバタと寄って来てエサをねだります。手から直接エサを食べてくれたり、ときには私の指まで一生懸命食べようとしてくるのです。
水槽には隠れ家用のシェルターを置いていますが、その上によく登ろうとしています。重い甲羅を背負いながら、足を精一杯にピーンと伸ばして、一生懸命に登ろうとする姿は、見ていて応援したくなります。
夜になると、水槽からゴトゴトと音が聞こえ、そうした姿が目に浮かびます。
シェルターに登るクサガメ(提供:クラシスキー)我が家は室内で飼育しているので、ときどき庭に出して日光浴を兼ねて散歩をさせます。地面に置いたとたん、大股ですごい速さで歩き始めます。のんびりしているように見えて意外と速く、気を抜くと物陰に隠れようとするため目が離せません。
エサをねだったり、何度も段差に挑戦したりする姿を見ていると、「カメはのんびりしているだけの生き物」というイメージが少し変わりました。
“かわいすぎる行動”の意味とは?
このようなかわいすぎる行動には、どのような理由があるのでしょうか? 疑問に思い調べてみると、クサガメは私が思っていた以上に周囲の様子をよく見ている生き物でした。
カメは視力が良く、音も聞き分けることができると言われています。そのため、人の顔や声、行動パターンなどを記憶し、私のことを「エサをくれる人」と認識し、寄ってきていると考えられます。
私のことを飼い主として認識しているのかは分かりませんが、少なくとも「エサをくれる人」として覚えているようです。
動くものに反応する性質があるため、私の指にも興味を持ち、食べようとしていると考えられます。
指を食べようとするクサガメ(提供:クラシスキー)水槽内の段差を乗り越えて動き回るのは、エサを探しに行こうとしていたり、甲羅干しをする場所を探したりしていると考えられます。野生では石や岩を乗り越えて移動する力が必要です。重い甲羅を背負いながらも障害物を乗り越える力を持っているのです。
一生懸命背伸びしているように見えますが、野生で生き抜くための大切な能力なのかもしれません。
そして、散歩の時に広い場所に置くとダッシュで物陰に隠れようとするのは、警戒心が強いためと考えられます。
一見するとかわいらしい行動ばかりですが、その一つひとつには野生で生き抜くための理由があるようです。こうした理由を知ると、普段見せてくれる行動がますます愛おしく感じられます。
クサガメの飼い方、飼う前に知っておきたいこと
我が家では30cm水槽にカルキ抜きをした水を10cmほど入れ、上陸できるようにカメ用のシェルターを設置。甲羅干しができないと皮膚病の原因になるため、陸場は欠かせません。
カメはエサや糞で水を汚しやすいため、週1〜2回ほど水換えをしています。放っておくと臭いが強くなるだけでなく、体調を崩す原因にもなります。
また、骨や甲羅の発育には紫外線が必要です。我が家ではときどき紫外線ライトを使用したり、庭に出して日光浴をさせたりしています。
クサガメは20〜30年ほど生きるといわれ、大きくなるとオスで約20cm、メスでは30cmほどになります。かわいいからと気軽に飼うのではなく、成長後の大きさや寿命も考えたうえで迎えることが大切です。
それでも、水槽に近づくたびに見せてくれる愛らしい行動のおかげで、水換えの手間もつい忘れてしまいます。
今では、我が家にとって毎日を少し楽しくしてくれる大切な家族です。
参考文献
加藤英明(2023)、は虫類・両生類 新訂版 (講談社の動く図鑑MOVE)、講談社